道下美里、ブラインドマラソンで世界新も、
まだ東京の「金」までの途中

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News(競技)、Murakami Shogo(人物)

 12月17日、第48回防府読売マラソンで、「日本視覚障がい者女子マラソン選手権大会」が併催され、リオデジャネイロパラリンピック銀メダリストの道下美里が自己ベストをマークして優勝した。2時間56分14秒というタイムは、ロシア選手の持つT12クラス(重度弱視)の世界記録を2分9秒も上回る堂々の記録だった。(12月20日現在、国際パラリンピック委員会に世界新記録として公認申請中)

最後はガイドランナーの志田淳さんの手を離れてゴールした道下美里選手最後はガイドランナーの志田淳さんの手を離れてゴールした道下美里選手「(練習通り)普通に走れば、記録は出ると思っていました。ゴールしてうれしくはありましたが、できれば、2時間55分を切りたかったので、『まだまだ』だなと思っています」

 快走に見えたレースを、道下は冷静に振り返った。世界新は最終ゴールではない。昨年、リオで銀メダルを獲得しても、「悔しさが一番」と言い、リオから1年が経ってもその思いは変わらず、むしろ強くなっているように感じた。今は、「2020年東京パラリンピックでの金」だけを見ている。

 リオでは金メダルのエレナ・コンゴスト(スペイン)に5分以上も水をあけられた。負けたことより自分で決めたペースで走り切れなかったこと、そして何よりも、「スタートラインで、『スピードで劣っている』と守りに入った」ことを反省点に挙げる。

 リオのスタート時点で、目安となる5000mのベストタイムは道下が19分39秒台。コンゴストは18分30秒台で当時、世界ランキング1位だった。リオではスタートから離されたものの、体感で30度を超す過酷なレース環境に、「コンゴストも後半は落ちてくるはず」と見込んだ。しかし、むしろ道下のほうが「前半は抑え、後半ペースアップ」というプランを守れず、「暑さの中でペースを上げようにも体が動かなかった」と振り返る。

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