道下美里、ブラインドマラソンで世界新も、まだ東京の「金」までの途中 (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News(競技)、Murakami Shogo(人物)

 防府で出した世界新の記録については、「3年分の思いがあるので、すごくうれしい」と喜びも口にした。というのも、2014年にこの大会で当時の世界最高となる2時間59分21秒を出すも、翌15年4月、ロシア選手に2時間58分23秒で塗り替えられた。道下は15年、16年の防府でも記録に挑戦した。だが、両年とも「世界新ペース」を刻んでいながら、レース終盤、伴走者にアクシデントが発生し、涙を飲んだ。

明るい笑顔がトレードマークの道下美里選手明るい笑顔がトレードマークの道下美里選手 アクシデントは伴走者たちが自身のコンディションより道下のサポートを優先したからでもあった。「ブラインドマラソンは『チーム戦』。私の配慮が足りなかった。いい勉強になった」と前を向いた道下。だからこそ、3年越しの記録達成には、「みんなで取りに行った世界記録」と安堵の笑顔を見せたのだ。

 そんな経験もあり、リオ後はあえて、さまざまな伴走者と組むようにしている。実は11月にも走り込みの一環で2本のマラソンレースに出たが、すべて異なる4人の伴走者と走っている。今回の防府マラソンは、「このレースにベストな2人」と総合的に判断し、今年4月のロンドンマラソンで共に金メダルを獲った青山由佳さん、志田淳さんと走った。

 レースはスタート直後の混雑で他のランナーとの接触が何度かあったり、追ったり向かったりの強い風にも翻弄され、「序盤の入りはよくなく、20kmまではすごく苦しかった」という。1㎞4分8秒で刻んでいく予定が、ペースはバラバラ。前半伴走の青山さんは前向きな言葉をかけ続けたが、安定しないリズムは高速ピッチで一定ペースを刻むのが持ち味の道下を不安にさせた。

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