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世界1位の上地結衣が語る「車いすテニスの楽しい観戦術」 (3ページ目)

  • 文●スポルティーバ text by Sportiva
  • 写真●五十嵐和博 photo by Igarashi Kazuhiro

伊藤 観客が満員の会場で戦う試合って気持ちも違うんじゃないですか?

上地 そうですね。やっぱり違うと思います。普段は観客といっても身内が多くて、身内を除くと本当に少ないんですよね。ロンドンパラが特別だったのは、テニスが有名で、パラリンピックの発祥の地のロンドンだから、純粋に車いすテニスっていうものを見たくて来た人が多かったのかなって思います。

伊藤 日本の大会で言うと、飯塚(福岡県)でやっているジャパンオープン()は、観客が増えてきましたよね。
※飯塚国際車いすテニス大会。国際テニス連盟公認の国際大会で、グランドスラムの次に大会規模が大きいとされるスーパーシリーズに格付けされている。

上地 そうですね。だいぶ増えましたね。

伊藤 出場していて違いは感じますか?

上地 違いますね。日本だからっていうのはもちろんあると思うんですけど、すごく後押しにもなりますし、パワーをもらえます。

伊藤 そうですよね。では満席にできるとしたら、観客にはどんなふうに試合を見て欲しいですか?

上地 私は、何か特別なものは特に求めないです。錦織選手の試合を見るのと同じように、「今のショットすごかったな」とか、「今の車いすさばきすごかったな」とか、本当にひとつの競技として自然に「すごいな」って思ってくれたら嬉しいです。

伊藤 上地選手が特に見てほしいプレイとは、どんなものですか?

上地 取れない範囲のボールっていうのは、明らかに健常者のテニスより多いんですが、いかにそれをカバーする力があるかっていうのと、いかにそこに打つかですよね。"予測力"っていうものがすごく大事なので、「次はここに打たせたいから、そのためにこっちに行かせて」とか、「こういう球を打たせるために、自分がこういう球を打つ」っていう。そういう、パッと見では分からない頭脳戦というところは、自分がもっと伸ばしたいところでもありますし、見てほしいところでもありますね。

伊藤 そういう見方をしたら、車いすテニスをより楽しく観戦できそうですね。長い時間ありがとうございました。

(おわり)

【プロフィール】
上地結衣(かみじ ゆい)・写真右
1994年4月24日生まれ。兵庫県出身。エイベックス・グループ・ホールディングス所属
先天性の潜在性二分脊椎症で、成長するにつれて徐々に歩行が困難となり、車椅子を使用するようになった。11歳のときに車いすテニスを始めると、あっという間に才能を開花させ、14歳という若さで日本ランキング1位に。2012年ロンドンパラリンピックではシングル、ダブルスでベスト8。2014年シーズンは、4大大会のシングルスで2勝、ダブルスでは年間グランドスラムを達成し、現在世界ランキング1位となっている。(1月27日現在)

伊藤数子(いとう かずこ)・写真左
新潟県出身。NPO法人STANDの代表理事。2020年に向けて始動した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」では顧問を務めている。2003年、電動車椅子サッカーのインターネット中継を企画、実施。それをきっかけにして障がい者スポーツと深く関わるようになった。現在、障がい者 スポーツ競技大会のインターネット中継はもちろん、障がい者スポーツの楽しみ方や、魅力を伝えるウェブサイト「挑戦者たち」でも編集長として自らの考えや、選手たちの思いを発信している。また、スポーツイベントや体験会を行なうなど、精力的に活動の場を広げ、2012年には「ようこそ、障害者スポーツへ」(廣済堂出版)」を出版した。

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