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【ミラノ五輪】オリンピック開幕前夜の地元イタリア人に聞いてみた 「誰を応援しますか?」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

 しかし、その場で「あの人の名前、知っている?」と通りがかりのふたりの女性とひとりの男性に聞いたが、3人とも名前は出てこなかった。うちひとりは誰かもわからなかったのである。何だか、パラレルワールドに迷い込んだような錯覚を受けた。

 気を取り直し、今度は宿泊しているホテルのレセプションで、男性スタッフふたりにゴッジャの写真を差し出して聞いた。若い男性ホテルマンは「名前? 知らない」と素っ気なかった。一方、年配の男性のほうは「ゴッジャを知らないなんて、おまえは勉強不足だぞ!」と勢い込み、初めてオリンピックに対して熱いイタリア国民に会えた。

「ゴッジャはベルガモ出身なんだ。ベルガモの女はめちゃくちゃ気が強いんだよ。やばいくらいな。だから勝負強い。今回もきっとメダルを獲るだろう」

 年配ホテルマンは右腕でスキー滑走するようなジェスチャーをし、誇らしげに語った。ステレオタイプなジェンダー差別表現が混ざっている気がするが、彼の強い思いをそのまま伝えることにした。自身がベルガモ出身で、同郷人である彼女を応援しているという。

「へー。大会が始まったら注目してみるよ」

 隣に立つ若いホテルマンはそう言って、肩をすくめた。

 実際のところ、大会が始まらないとオリンピックへの関心度はわからない。筆者が取材したパリ五輪でも、大会前は反対派の騒ぎのほうが目立ち、市民の関心は低かったが、日を追うごとに高まり、最後は熱に浮かされたようになっていた。その"毒の強さ"こそがオリンピックとも言えるだろう。身命を擲(なげう)つ選手たちの一挙手一投足に対し、いつのまにか感情移入するのだ。

 2月6日(現地時間)、開会式はカルチョの聖地と言えるスタジアム、サン・シーロ(インテルファンは「ジュゼッペ・メアッツァ」と呼び、ミランファンは「サン・シーロ」と呼ぶ。スタジアム名ひとつにもミラノの現実が浮かぶ)で行なわれる。すでに一部競技が先行してスタートしており、5日にはスノーボードの予選などが行なわれる。

 大会後、ミラノの人々がオリンピックをどう受け止めているのか。その変化を感じるのが楽しみだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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