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「執念深さだけで会計士の資格を取った」ボートレーサー・渡邉雄朗が掲げる目標までの長い道のり (3ページ目)

  • 杉田純●取材・文 text by Sugita Jun

真剣な表情でエンジンを確認する渡邉 photo by Ishikawa Takao真剣な表情でエンジンを確認する渡邉 photo by Ishikawa Takao

【フライングで停滞】

 ところが、その後はA級とB級を行き来する期間に突入する。原因はフライングだった。

「最初はガツガツやる気があったほうがいいなと思っていたんですよ。積極的に勝ちに行くスタイルで、まくりが一番だ、みたいな。そのスタイルだとすぐフライングするんですよね。そうなるとまくりも封印されて。もう一発やろうと思ったら2本目もフライングを切って。そこで停滞しちゃったんですよね」

 ボートレースではフライングのペナルティが重く、1本フライングを切ると30日間レースに出場できなくなる。1期(6カ月)の間にフライングを2本切る「F2」になると、合計で90日もの間レースから離れてしまう。

 渡邉の場合、このF2になった回数だけでも通算5回。思うようにレースをすることができず、勝率が伸び悩んだ時期があった。同期との争いは、いつしか自分との戦いになっていたのだ。

「自分の気持ちのコントロールを変えたのがここ2、3年です。あまりやる気を出しちゃダメなんです。フラットな気持ちでやったほうがレースもしっかり組み立てられるなって気づきましたね」

 そうして今、渡邉は若手時代とはレーススタイルを変えつつある。1着にこだわらず冷静に2、3着を取りに行くこともあり、レースの展開次第で柔軟に立ち回っている。フライングと隣り合わせだったまくりへのこだわりを捨てた結果、直近3期はフライングを1本も切っていない。そして渡邉はA1級に定着した。

「理想のレースはまくりで、それは変わらないんですけど、そればかりにはしたくないですね。バランスを取りながらオールラウンダーとしてやっていかなきゃなって思っています」

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