ボートレーサー・渡邉雄朗は公認会計士試験で電卓を没収され「暗算と筆算」で合格した (2ページ目)
【勉強しながら東西線10往復!?】
簿記すら勉強したことがない状態での見切り発車が、渡邉の日常を大きく変えた。ボクシング漬けの日々は、1日最低10時間を勉強に充てるスケジュールに激変。その密度と集中力は並大抵のものではなかった。
「一番集中できるところで勉強したいなといろいろ試していたんですけど、電車の中が一番僕に合ったんですよ。だから、しょっちゅう朝8時くらいから電車に乗って、東西線を10往復くらいしていました。人が揺れている感じと、ガタンゴトンって音がすごくマッチしてめちゃくちゃ集中できたんですよ」
暗記系の勉強は電車の中で行ない、さらに自習室でも勉強に没頭。大学の勉強の熱量とは比べものにならないくらい、公認会計士の勉強には集中していた。その甲斐があり4年生の夏、2度目の挑戦にして公認会計士試験を突破する。
就職活動と大学の単位取得はバタバタだったものの、何とかクリア。渡邉は晴れて公認会計士として監査法人に勤めることとなる。
夢の一歩目を歩み出した渡邉だったが、待ち受けていたのは「死んじゃうと思った」と語るほどの激務だった。
朝9時半に出社して終電帰りは当たり前。帰宅後も仕事は続き、日報を送るのは夜中の3時だった。さらに、渡邉が務めていた監査法人は規模が小さかったため、1年目とは思えない仕事も任されてしまう。
「毎朝寝不足で気持ち悪くなりながら起きるんですよ。仕事内容も難しいことを任されちゃって......。訳もわからずに仕事して先輩からも怒られるし、勉強してきたことが全然使えないじゃん、みたいな。それで1年くらいした時に、転職しようと思ったんです」
残業代もなく、働けど働けど給料は変わらない。大手に入社した同期たちと自らの差は大きく、1年目を終える頃には「もう会計が嫌になって、まったく違う仕事をしたい」と思うまでに至っていた。
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