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実況アナウンサーから発信者へ 豊原謙二郎がNHK退局を決意し、スポーツの価値を問い続ける理由 (2ページ目)

  • 一ノ瀬伸●取材・文 text by Ichinose Shin

── 豊原さんが伝えていきたい社会におけるスポーツの価値とは、どんなところにあるのでしょう。

豊原 ひとつに、人材育成の点で、スポーツによって多様な能力が養われると考えています。私自身、(学生時代に)ラグビーをやったり、実況で伝えたりするなかで、ずっとスポーツの醍醐味だと思っているのが状況判断。たとえば、野球では監督のサインがあるとしても、実際には自分の頭で考えて自分の責任で打ったり走ったり行動しますよね。どのスポーツも状況判断の連続で、つねにそれを学べる場だと思います。

 それと自分の未来をデザインする力。高校に進学して野球部に入ったら、3年生の夏にどうなりたいかと長い目で目標を掲げながら、実現に向けてトライ・アンド・エラーを繰り返していく。仮説を立ててチャレンジする能力を鍛えることができる。そして、自分を律する力もつくと思います。競技で成長したり結果を残すために私生活も含めて律しながら過ごす。私はこの3つの能力を「3D」(Decision・Design・Discipline)と呼んでいます。

 もちろんスポーツをやったり、見たりする時にそんな小難しいことは考えないと思いますし、"お勉強"っぽく偉そうなことを言うつもりもなく、楽しく面白く伝えていきたいと思っています。それでも、「スポーツってなんかいいよね」ではなく、価値や面白さをできるだけ言語化して、スポーツがもたらす恩恵を具体的に示したい。私もラグビーの経験が仕事の向き合い方につながった実感がありますし、スポーツは仕事やビジネスの世界に通じることも発信したいです。

【フリーアナウンサーとしての今後】

── 具体的にはどのような活動をする予定ですか。

豊原 退局後は、フリーアナウンサーとしてスポーツ実況をしながら、自分の会社を設立してコンテンツ発信の準備を進めているところです。今年7月にはYouTubeチャンネルを立ち上げて、まず1本目はラグビー元日本代表の五郎丸歩さんのインタビュー動画を配信します。2015年ワールドカップのフィールドで戦っていた五郎丸さんと、その試合の実況席にいた私が、ふたりで南アフリカから大金星を挙げたあの一戦を振り返るという内容です。

 今後も、これまでにご縁ができたいろいろな競技のトップアスリートの方にも頼らせていただきながら、コンテンツをつくっていきます。動画のほかに記事やポッドキャスト、イベントも含めてスポーツファンや一般の方を巻き込みながら展開できたらいいなと考えています。

 スポーツファンに楽しんでいただきつつも、見てくれる人にとってプラスになるような、ヒントを得られるような番組づくりを意識していて、「ちょっといい話が聞けたな」という読後感をもってもらえたらうれしいですね。

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