カーリング女子日本代表・上野美優が語るオリンピックへの想い「改めて考えさせられました」 (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro

――パリ五輪をご覧になって、印象深かった競技などはありましたか。

「時差の関係もあって、すべての競技を見ることはできなかったのですが、柔道の阿部詩選手の姿は印象的でした。3年前の東京五輪で金メダルを獲ってからもう一度、3年間積み上げてきた選手でも(敗退後に)あんなに感情が揺れ動くシーンを見たら、『少し怖いな』と思いました。

 これまでは単純に『私もあの舞台に立つぞ』みたいに思っていたんですけど、オリンピックには勝つ人もいれば、負ける人もいて......。そんなの当たり前なんですけど、その(本当の)姿を目の当たりにして、改めて考えさせられました」

――その"怖さ"といったものが、今季に何らかの影響を与えそうですか。

「きっとあの場所に行かなきゃ経験できないこともありますし、『そのために勝たなきゃ』といった焦燥感もあったんですけど、いずれにしても先の話です。その前に目の前のことをしっかり見て、課題や取り組むべきことのために1時間1時間、一日一日を大切にして打ち込んだうえで、最終的にオリンピックが待っているんだって、ある日、ハッと気づいたんです。だから、怖さを感じるとしても、もうちょっと先でいいです」

――そのためには、今季の過ごし方が重要になります。チームとしても、世界選手権への再挑戦が望まれます。

「もちろん、世界選手権にはもう1回出たい、挑戦したい、という気持ちはあります。ですが、それも同じで、そのためにはどこを伸ばすのか、どこを積み上げていくべきか。目の前の足りない部分を意識して、そこに集中して過ごすシーズンになると思います」

――スキップとしての戦略的な部分はいかがでしょうか。

「世界選手権でも、私がスキップになってから対戦したことのあるチームは韓国代表だけだったんです。ですから、今季の海外ツアーやパンコンチネンタル選手権などでは、対戦相手への意識を高めて、強いチームとの試合経験を積んでいく必要があると思っています。そのなかで、特に作戦の幅は広げていきたいですね」

――昨季の上野選手は、とりわけ試合序盤などでは慎重に、リスクを嫌う選択をしていた印象があります。

「やっぱり大会序盤や試合序盤というのは、『無理をしないように』っていうのが常に頭のなかにありました。でも、世界選手権では2-3で負けているのに、なかなか点を取らせてもらえないとか、チャンスが来そうな状況でもいつの間にか複数点が取れる展開ではなくなっているとか、そんなことが多かったので、もう少し選択の幅を広げていって、攻撃的な試合ができるようになりたいですね」

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