体操・橋本大輝を育てた名伯楽が語る指導論 「スポーツと人間教育を一緒にしてはいけない」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

【「怒られてきた子は弱い」】

 神田コーチにとって体操で重要なのは、面白いか、面白くないか。好きかどうか。だから教え子たちにも無理やりやらせるのではなく、違う目標を持つ選手個々がやりたいように打ち込める環境を作っているという。だから指導する際も、自分の体操を教え子に押し付けることはしない。

「私に教わらないほうがもっと強くなるかもしれない、ということもあるわけです。ほかの人に教えてもらえばもっと強くなったかもしれないと、常に思ってやっていますよ。橋本も違う人に教わっていたら、もっと強くなっているかもしれないと思ってやっています。アドバイスをするのに迷うことがあります。言おうか、言うまいか。もしかしたら、言わないほうが、この子は自然に私が知らないアプローチの仕方をしてやれるかもしれない、と。言い方でも、迷いながら言ったりするときもあります。

 ただ、『この動き方だけは絶対ダメだぞ』と、いくつかのことについてはしっかりと伝えるようにしています。原則は、言おうかどうしようか迷ったら、とりあえず言う。迷って言わないと、いいことはないですから(苦笑)。でも、毎日(練習を)見ていないときは、さらに迷いますよ。だから、適当にやるしかないんですよ(笑)。自分のポリシーを押しつけてはダメなんですよ。選手はみんな、それぞれ違うんですからね」

 体操が好きで取り組んでいる選手をどう導いていくか。神田コーチが選手を育てるにあたって必ずやっていることを教えてもらった。

「最近は横着しちゃっていますが、以前は親に『どうやって育てましたか?』とよく聞いていました。練習を見ていると、"この子はよく怒られながら育ってきたのかな"とか感じることがある。親に怒られてきた子は心が弱いんです。一番気にしたのは、親に『小中学校の試合で失敗した時にどうしていましたか?』『お母さんは文句を言ったでしょう?』と聞くと、結構、当たります。怒られてきた子は弱い。そこを(高校に入った時に)もう一度リセットしないといけない。(それまでは)お母さんに怒られないようにやってきたので」

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