体操・橋本大輝を育てた名伯楽が語る指導論 「スポーツと人間教育を一緒にしてはいけない」 (4ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

 それを踏まえてエピソードをひとつお伝えすると、橋本が跳馬のロペスを習得した時の仕上げ方は立派でした。毎日の練習で10本以上跳んでいましたから。この選手はすごいなと思って見ていました。今年のパリ五輪選考会だった全日本選手権前は、やっぱり練習をしっかりやっていました。大会に出発する前日にも、6種目を通して、その上で鉄棒を1時間くらい、納得いくまで高校生のように練習していました。別に失敗してないんですよ。でも、タイミングがもうひとつ合わないとか、器具が合わないとか、『気持ちよくないんです』ということで、納得いくまでやり続ける。そして最後に気持ちいい演技を通したことで、全日本選手権本番でピッタリやってきた。すごい選手です」
(つづく)

■Profile
神田眞司(かんだしんじ)
1959年2月1日生まれ、千葉県出身。中学1年で体操を始め、習志野市立習志野高校、順天堂大学、同大学大学院を経て、1989年4月から母校・習志野高校の教諭になり、教師生活と同時に体操指導者としての活動もスタート。2006年4月から船橋市立船橋高校の教諭として同校体操部を指導し始め、今年で指導歴36年目を迎える。定年退職後、5年間の再任用教諭も24年3月で終了。現在は市船の技能講師とセントラルスポーツのアドバイザーコーチとして教え子たちを指導する毎日を送っている。23年に3度目となる日本体操協会の優秀指導者賞を受賞している。

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