進学校に通う金メダル候補、安楽宙斗17歳の悩み「同級生はすでに受験勉強をしている人もいて...」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro

【友だちがオリンピックを忘れさせてくれる】

 それが、2023年シーズンは一変する。

 2月にあったボルダージャパンカップ、リードジャパンカップとも7位に終わったものの、4月のボルダー&リードジャパンカップで優勝。世界選手権の日本代表の座を射止めると、2週間後に開催されたボルダーワールドカップ八王子で、W杯初出場ながら5位。そこから快進撃が始まる。

 ボルダーW杯、リードW杯ともに年間1位を獲得。8月の世界選手権ではボルダー4位、リード2位、ボルダー&リード4位。そして11月、パリ五輪アジア大陸予選で優勝してパリ五輪への出場権を手にした。

 ニュースやスポーツ番組などで取り上げられることが一気に増えたことで、学校生活にも変化が生じたという。

「それでもクラスメイトは今までどおり普通に接してくれるんですけど、ほかのクラスの人や学年が違う人たちから"見られている"ようになりましたね。それが居心地が悪くて。でも、最近はそれも割りきれるようなったというか、慣れてきました」

 慣れたことでの割りきりは、メディアからの取材でもできるようになったと打ち明ける。

「最初の頃は取材が入ると、カメラマンが困らないように動こうとか気にしちゃって、練習に身が入らなかったんですよね。取材を受ける時も、ちゃんと伝わるようにと思ってしゃべりすぎてしまっていたんですけど、最近はそこも気にしないようにしています。回数を重ねて慣れたこともありますが、割りきれるようになりました」

 こうした変化の要因は、友だちの存在もあるという。

「去年はクライミングが忙しくて、友だちとぜんぜん遊べなくて。でも、オフシーズンにクライミングと関係ない友だちと一緒に遊ぶ時間がつくれて、すごくリフレッシュできたんですよね。クライミングとかオリンピックとかを忘れさせてくれる。

 もしかしたら、友だちが気を遣ってそう仕向けてくれているのかもしれないですけど、そうだとしてもそれがすごくありがたくて。そういう友だちがいることで、また次に向かう気持ちが湧いてきたという感じでした」

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