高梨沙羅が再び目指す「世界一の山」。新しいジャンプを模索中も、W杯札幌大会で見せた明るい表情の理由 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO SPORT

 ただ、今季は女子に対してのジャッジの飛型点のつけ方が厳しくなり、小柄な高梨は動きも小さく見えて不利な状態だ。今回の2試合を見てもジャッジが出す得点は16~17点(20点満点)がほとんどで、18~19点を出す選手とはトータル4~5点の差がある現状だ。横川ヘッドコーチは今後の改善点について、こう説明する。

「立ち上がってから早く突っ込んでしまう分、その瞬間にスキーがうしろにスリップしてしまう感じになってジャンプ台に上手く力が伝わらなくなっている。いつもの沙羅のようにしっかり踏めるようになれば、下に行ってからの飛距離は、もう10mくらいは簡単に伸びる。本人ももどかしいだろうけど、もっと簡単に飛ぶみたいなほうがいいと思います。着地のテレマーク姿勢も、今はしっかり踏めていなくてスピードが出ない分、最後は伸びないで高いところからストンと落ちる着地になっていて怖いと思います。でもジャンプ台をしっかり踏んで後半も伸びるようなジャンプをすれば、着地への入射角も緩やかになり自然とテレマークを入れられるようになると思います」

 北京五輪シーズンへ向かう前も、高梨は一からジャンプを作り直そうと、アプローチの姿勢から取り組み、テイクオフ、空中姿勢という順番で自分のジャンプを作ってきた。その作業を道具が変わった今季は、また最初からやらなければいけなくなった。それでも2月末からの世界選手権へ向け「早く自分のジャンプを作るためにも、いろんなことを試していかなければいけないと思っています」と前を向く。

「3年ぶりの札幌開催のW杯で、自分のジャンプでお客さんを沸かせられなかったのは正直悔しいところではあるし、もどかしい気持ちもあります。ただ、他の選手がビッグジャンプを飛んで観客が喜んでいる様子を見ていたら、『やっぱり試合っていいな』と思いました。スキージャンプをみんなで楽しんで、盛り上げられてというのが一番だと思うので、それを見に見えて感じることができた、すごくいい大会だったと思います」

 北京五輪のあとから再び登り始めた山。「目指すのは世界だから、当然登りたいのは世界一の山です」と話す高梨は、その頂点を次の五輪までには極めたいと、一歩ずつ進もうとしている。

 次戦、12日からの蔵王大会は、彼女が2012年3月にW杯初勝利をあげたジャンプ台。そこで観客をどこまで沸かせてくれるかを楽しみにしたい。 

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