高梨沙羅が再び目指す「世界一の山」。新しいジャンプを模索中も、W杯札幌大会で見せた明るい表情の理由 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO SPORT

 この日は逆に試合前の予選で、前に突っ込み過ぎた踏み切りになっていたが、それを1本目では少し修正できていた。

「試合になると、どうしても気持ちが入ってしまい、グーッと行ってしまうんです。その辺をしっかり押さえ込んで待たなければいけないのはわかっていました。今日を踏まえて明日はどうしていくかというのを考えていくのは、そんなに辛い作業ではないなと思っています。今は1本飛ぶたびに『次のジャンプはどうしていこうか』と考えていけているので、冷静に一歩引いて考えられるようになったのかなと思います」

 新ルールのなかで、まだ低迷している状況。それでも冷静でいられる彼女に「大人の競技者になれたか」と聞くと、「大人になりたいですね」と答えた。そして「もう年齢的には大人なんですけど、ちょっと気持ちが入り過ぎて突っ込んじゃうところは、まだ子供っぽいですね」と言って爽やかな笑顔を見せる。

 翌日の第2戦は向かい風の条件で、予選は120.5mを飛んで5位といい位置につけていた。だが1本目はそれまでの向かい風が急に弱まり、全選手中、高梨だけがわずかな追い風になる不運で118.5mを飛んで13位。向かい風になった2本目はK点超えの123.5m。9位のジャンプで、順位を10位に上げて試合を終えた。

「1本目は、飛び出してから中盤までは追い風だったけど、最後のところでいきなり爆風のような向かい風が吹いたのでうしろに跳ね返される感じになり、着地ではテレマークを意識できませんでした。でも昨日のような突っ込みをしていたら、追い風のなかでもっと手前で落ちていたと思うので、そこはテイクオフをしてから少し待つことが改善できたと思います。

 空中での姿勢コントロールは、ある程度はできて飛べるようになっているという感じはあるけど、勝つためにはどんな風でもある程度まで飛べなくてはいけない。調子がいい時は追い風のなかでも、マキシマム(落下をし始める地点)までまったく追い風を感じないくらいのスピード感になりますが、今はまだそれがないのが一番苦しい部分です。それをどうやって取り返していくかを考えていかなければいけないと思います」

 この日の2本目も、できることはやって、それ以上でも以下でもないと話す高梨。

「飛距離に関してはトップ争いに食い込めるものも出ていたり、出ないときもあったりという感じだけど、それを試合で揃えるというのが大変。やっぱりコンスタントに10本中10本をいいジャンプで飛ばなければいけないので、まだいろいろ試しているなかでは同じジャンプは飛べていないです。試合に向けての作り上げ方と、今自分のジャンプを作っている作り上げ方との誤差が出てしまう部分はまだあると思います」

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