東京五輪の「経費のコスト超過率」は平均のはるか上も、詳細は闇の中。「レガシー」の継承は果たされずに終わった (3ページ目)
継承されなかった「レガシー」
会計検査院のこの指摘を受けた政府は、2013〜2021年に支出した関連経費を3959億円と公表した。会計検査院報告の1兆600億円とは金額にかなりの隔たりがあるものの、組織委員会が掲げる予算(6404億円)以外に、国が負担している関連経費が存在することを認めた形となった。
同じく東京都も、組織委員会が示している大会経費以外の関連経費があることを認め、計上している。都市インフラの整備費やセキュリティ対策費など2017〜2021年度に7349億円の関連経費を支出したことを明らかにした。組織委員会の最終報告書によると都の大会経費分担額は5965億円のため、この分担金と関連経費を足した1兆3314億円を、都民はオリンピックに対して負担していることになる。
会計検査院の指摘する1兆600億円、東京都が認めている1兆3314億円、組織委員会が負担する6404億円を足した3兆318億円が、現在把握できる「オリンピックのため」にかかった経費の全体像である。ただし、2019年以降の会計検査院の検査は未報告のため、さらに数百億、数千億円が上乗せされる可能性は高い。
どこまでを「オリンピックのため」に使った経費と見るかには異論もあるが、総額を3兆318億円とすると、コスト超過率は313%。そのうち約8割を公金が負担していることになる。
これですべてというわけではなく、毎年「負の遺産」のコストも背負わされていく。「オリンピックのため」に新設した国立競技場の維持費は年間約24億円。2020年度は、少なくとも約9億円の赤字であったことが明らかになっている。また、東京都が新設した6競技場うちの5つは計画段階から赤字運営。その総額は年間約11億円にものぼり、この先も都民が赤字を支払い続けることになる。
ロンドン五輪も東京と同じく大幅なコスト超過に陥った。そのため会計検査院が予算の監視をオリンピック開催の6年前から始め、約半年ごとに下院決算委員会への報告を行なった。それを基に開催費用の削減が図られ、最終的な国の支出は想定予算を下回っている。招致時よりはるかに増大した経費だったが、会計検査により議会が行政の監視と国民への説明責任を果たしたことは一定の評価を受けたと言われている。
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