東京五輪の閉幕から1年も「負の遺産」は消えない。今後も国民に負担がかかる経費問題をあらためて検証する (2ページ目)
予算倍増のカラクリ
組織委員会にとっては、2016年12月に発表した「V1予算(IOCへ提出する第1回目の予算。2回目以降はV2、V3、V4...となる)」、組織委員会予算5000億円、その他予算1兆円の計1兆5000億円が予算のベース(予備費1000〜3000億円を除く)。彼らにしてみると、開催延期や感染症対策、無観客など、想定外の問題が起こりながら、当初のベース予算を下回ったのだから、「大成功」と胸を張れる結果なのである。
招致から開催が決定したのちに突然、予算が倍増したことにもカラクリがある。そもそも立候補ファイルには、すべての大会予算を計上していない。IOCが指定する基本的な項目の予算のみで、新設する競技場も本体工事費を提示するだけ。実際に大会を開催するために必要な設備費、運営費等は含んではいない。東京五輪では、9つの競技場を仮設で計画していたが(最終的な仮設競技場は6施設)、立候補ファイルに仮設競技場にかかる費用は「0円」と記されていた。
さらに、213億円と立候補ファイルに提示した「輸送」は、V1予算では1400億円、187億円だった「セキュリティ」は1600億円へと、桁まで増やした項目も少なくない。結果として総額が倍増してしまったということではなく、招致の段階から7340億円でオリンピックは開けないことを、組織委員会もIOCも東京都も理解していたということである。
現にV1予算が発表されるまでも「2兆円を超す」「3兆円になるだろう」など当時の森喜朗組織委員会会長、舛添要一都知事の、見通しとしての発言はあった。経費超過の批判が大きくなりはじめると、組織委員会は、8000億円で立候補し、開催決定後、2兆1000億円の予算に膨れ上がったロンドン五輪の例を引き合いに出し、これは決しておかしなことではないと説明していた。
つまり「世界一カネのかからないオリンピック」という言葉は、誤解でも何でもなく、まったくの偽りであり、「東京都には4000億円もの基金がある」との猪瀬都知事のアピールも、何ら意味はなかった。それだけの基金があろうとも、開催にはさらに1兆円以上が必要とされたからである。
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