小平奈緒、平昌五輪金メダルの裏にあった男子との練習。「男子のスピードで滑るのが当たり前に感じる錯覚」で強くなった
<冬季五輪名シーン>第9回
2018年平昌五輪 スピードスケート女子・小平奈緒
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いよいよ2月4日からスタートする北京五輪。開幕を前に、過去の冬季五輪で躍動した日本代表の姿を振り返ろう。あの名シーンをもう一度、プレイバック!
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2018年平昌五輪スピードスケート女子500mで金メダルを獲得した小平奈緒この記事に関連する写真を見る
【大舞台で新記録】
2014年ソチ五輪500mで5位だった小平奈緒は、2年間のオランダ留学に踏み切って自身の進化に挑んだ。そうした努力と積み重ねの成果が金メダル獲得となって大きく花開いたのは、2018年2月18日の平昌五輪女子500mだった。
2位の李相花(韓国)に0秒39の大差をつけて出したその記録は、低地リンクで女子初の36秒台となる36秒94。表彰台で涙を見せた小平は記者の前に来ると「すごく冷静な自分が今ここにいるんですけど」とほほ笑み、自身の記録について「五輪という舞台で出せたことが本当にうれしいです」と続けた。
公言はしていなかったが、2005年から指導を受ける結城匡啓コーチといつも話していた記録だった。レース直後に36秒台の数字を目にした時、小平の脳裏を巡ったのは「あっ、現実になったんだ」との思いだったという。
小平の滑りのなかに、「低地の36秒台」の数字が見えるようになったのは、平昌五輪の前シーズンだった。気圧が低く空気抵抗も小さくなる標高1000m以上のリンクでは当時、李の36秒36の世界記録を筆頭に5選手が出していた36秒台。だが、低地リンクでの世界最高記録は、2015年にアメリカのミルウォーキー(標高220m)でヘザー・リチャードソン(アメリカ)が出した37秒24だった。
小平は2017年2月に標高41mの韓国・江陵オーバルで開かれた世界距離別選手権でリチャードソンの記録を上回り、高地で出した自身の日本記録より0秒16も速い37秒13をマークした。その時、本人は「オランダの選手から(記録について)伝えられました」とうれしそうに話していた。
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