競輪・中野慎詞がデビューから圧巻の6戦全勝。S級入りの18連勝を目指し「勝ち方にもこだわりたい」

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

年始からの前橋競輪、取手競輪のそれぞれ3レースで勝利した中野慎詞年始からの前橋競輪、取手競輪のそれぞれ3レースで勝利した中野慎詞
 2022年、元日から競輪界に新しい風が吹き荒れている。昨年12月に日本競輪選手養成所を早期卒業したばかりの中野慎詞が、1月1日~3に開催された前橋競輪でデビュー。そこで3連勝を飾っただけでなく、1月10日~12日の取手競輪も3日間、完全優勝し、ここまで6戦全勝だ。

 中野は、例年約5~6倍と言われている倍率を突破して日本競輪選手養成所に入った実力者で、さらに入所した71人中、厳しい規定をクリアして早期卒業を果たした2名のうちのひとり。まさにエリート中のエリートだ。

 圧倒的な脚力で逃げるスタイルは競輪ファンはもちろん、初めて競輪を見る人の目を惹きつけ、競輪の面白さを伝える力も備えている。大物新人は最高の形でプロの道をスタートさせた。

「ここまで順調にきていますのでホッとしている部分もありますが、アマチュアの自転車競技とは違う難しさもあります。ただどちらかと言うと、これからどんどん力を発揮し、突き進んでいきたい気持ちが今は強いですね」

 2つの開催を終えた中野は、笑って今の心境を語ってくれた。前橋での1戦目を振り返ってみると、1月1日のレースは完全先行で逃げきって勝利。2日のレースは残り1周半で一気に加速し、全員を突き放して大差の1着。ただ3日目の決勝は逃げきり態勢を作ったものの、最後の直線で差を詰められ、車輪ひとつ差での辛勝だった。完全優勝ではあるが、レース直後の中野の表情はさえなかった。

「思った以上に走れなかったです。早期卒業らしい走りではなかったですし、自分の望んだ走りでもなかったです。もっと直線が長かったら、結果は変わっていたと思います」

 プロとアマでは使う自転車も異なり、レースの運び方、仕掛け方もまったく違う。そもそもレースに至るまでの移動や宿舎での生活など慣れないなかでの競争だ。精神的な負担も大きくデビュー戦の前橋の3日間は「ふだん、昼寝をしたら夜眠れないことが多いが、この時期は昼寝をしても、(疲労で)夜早く眠りにつけていた」という。プロの世界はかくも厳しい。

 そして彼の身には「期待」という名の重圧が重くのしかかっている。大学生でありながらナショナルチームにも入り、養成所を早期卒業したエリート。ファン、そしてメディアも「勝利」だけを期待してその姿を見守っている。そのプレッシャーは計り知れない。だが本人はメンタル面のマネジメントはうまくいっていると話す。

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