原田雅彦「頭のなかは真っ白になった」。冬季五輪で大失速となったスキージャンプ団体最後のジャンプ

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

<冬季五輪名シーン>第1回
1994年リレハンメル五輪 スキージャンプ・ラージヒル男子団体

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いよいよ2月4日からスタートする北京五輪。開幕を前に、過去の冬季五輪で躍動した日本代表の姿を振り返ろう。あの名シーンをもう一度、プレイバック!

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 この記事に関連する写真を見る 1994年2月22日のノルウェー・リレハンメル五輪ラージヒル男子団体。優勝がかかった最後のジャンプで大失速した原田雅彦は、ブレーキングトラックの端で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

 先にジャンプを終えて原田のジャンプを待ち構えていた岡部孝信と西方仁也、葛西紀明が駆け寄り、「銀メダルだよ、原田さん。よかったじゃない」と声をかけた。

 葛西はのちに「泣いていると思って心配して声をかけたら、顔を上げてニヤッと笑ったんです。このヤローと思いましたよ」と笑いながら話した。

 原田はその時、「飛び出した瞬間に"やってしまった"と思って頭のなかは真っ白で止まった時に頭を抱え込むしかなくて。どうしたらいいんだろう、どんな顔をすればいいんだろうと思っていました。そうしたら3人が駆け寄ってきて『よかったじゃない』と笑顔を見せてくれたので、ホッとしました」と振り返った。

 日本のスキージャンプ界にとっては4大会ぶり、1988年カルガリー大会から正式種目になったラージヒル団体では初めての銀メダルだった。うれしさはあったが、戦いぶりを考えると悔しさのほうが大きいメダル獲得だった。

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