2021.08.16

欧州強豪国は五輪サッカーをどう報じたか。スペイン「失敗」、ドイツは希薄

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「おらが町」の選手を応援、サッカーは片隅に

小宮良之(スペイン):ライター

 8月6日、スペイン大手各紙の一面がこの国のスポーツ報道を象徴していた。スポーツクライミング男子複合でアルベルト・ヒネスロペスが優勝。空手の女子形でもサンドラ・サンチェスが決勝で日本の清水希容を破っている。それまで1個だった金メダルが、3個に増えた。この快挙にもかかわらず、2人は一面の片隅に追いやられた。

 大きな写真が使われたのは、バルセロナのエースであるリオネル・メッシの正式な退団発表だった。

 スペイン国内におけるスポーツ最大の関心事は、常にバルサ、レアル・マドリードである。この極端さは他の国では考えられない。メッシ以外にも、レアル・マドリードのセンターバック、ラファエル・ヴァランやマルティン・ウーデゴールの去就などが連日、厚く報じられていた。

 スペインは複合民族国家で、1970年代まで独裁政権が続いていた。一体感は薄く、今もお互いに遺恨がある。「おらが町」というよりは、「おらが国」というのか、カタルーニャ、バスク、ガリシア、アンダルシアなど、各地方で言語も文化も異なり、その民族構造がスポーツ報道の背景にもあるのだ。

 たとえばポルトガルの北に位置するガリシア州では、ガリシア人カヌー選手のテレサ・ポルテラが地元一般紙の一面を席巻している。ポルテラは、スプリント女子カヤックシングル200メートルで銀メダル。39歳となるまで何度も五輪に挑戦してようやく勝ち取ったメダルに地元は湧いたという。

 一方、サッカー人気は滅法高いにもかかわらず、民族的なねじれのせいで、スペイン代表サッカーには関心が薄い。なかでも五輪サッカーのネタは"売れない"ようだ。

異例の豪華メンバーを招集も、決勝でブラジルに敗れたサッカーのU-24スペイン代表異例の豪華メンバーを招集も、決勝でブラジルに敗れたサッカーのU-24スペイン代表 この記事に関連する写真を見る  東京五輪の男子サッカー準々決勝でコートジボワールを延長戦の末に5-2と勝利した翌日も、サッカー記事はトップではなかった。国内最大のスポーツ紙『マルカ』は、射撃の混合トラップで優勝したファティマ・ガルベス、アルベルト・フェルナンデスの2人が金メダルをかむ姿を一面に掲載。また、男子テニスで銅メダルを獲ったパブロ・カレーニョの写真のほうが、サッカーよりも大きかった(時差による締め切り都合上の問題もあるのだが)。