そうだったのか! 楢崎智亜が「無双状態」になるまでの進化の過程 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO


 それまで主流だった岩場でのクライミングを彷彿とさせるスタティック(静的)なムーブを求める課題は減り、対してランジ(ジャンプ)やコーディネーション(※)といった見た目で派手でダイナミックな動きを求める課題が多く出された。

※コーディネーション=手足をタイミングよく動かして次のホールドを掴む動き。

 こうした課題を得意にしていた楢崎にとっては、これが強烈な追い風になったのは言うまでもない。

 無論、だからといって楢崎の見せた大舞台での際立つ勝負強さや残した功績が色褪せるわけでしない。ただ、このシーズンの楢崎は「目覚めた」というより、「眠ったまま」で勢いに任せて勝ったと表現したほうがしっくりくるというだけだ。

 その2016年シーズン、楢崎のなかに覚醒した部分があるとしたら、それは「勝つための意識」だったのではないだろうか。

 話を冒頭の課題に戻そう。

 楢崎は準決勝の第1課題を完登し、第2課題はゴール取りが届かずに完登を逃した。驚かされたのは、結果ではなく、楢崎の見せた足使いにあった。

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