楽しさもつらさも知る臥牙丸が語った「お相撲さんでいるということ」 (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ようやく病院に行って、自分でお腹にインシュリンを打つようになって、今では症状はだいぶ落ち着いているかな? 食事制限とかをすると痩せてしまうから、食事は普通に摂って、好物の甘いものとかはやめているという状態です。

 体のことで落ち込んだ時や、そうじゃない時でも、故郷のお母さんとはテレビ電話で毎日話をしていたよ。お父さんが交通事故で亡くなってから、お母さんの体調もよくなくて、本当に心配だったから。

 ジョージアは日本から飛行機の直行便もないし、片道10数時間はかかる。お相撲さんに長い休みはないから、僕がジョージアに帰れるのは、2年に1回くらい。だから、お母さんを日本に呼んで、いい治療を受けさせてあげたいと思っていたんだ。

 でも、僕の糖尿病がわかったのと同じくらいの時に、お母さんの病気も悪くなってきてしまって......。僕も十両に落ちたり、幕内に帰り咲いたり、相撲の内容も精彩を欠く感じだった。

 そして昨年の7月、とうとうお母さんは亡くなった。何もしてあげられなくて、僕は生きる気力がなくなったような感じだった。

 母の葬儀のために、名古屋場所が終わってすぐにジョージアに帰国し、母とのお別れをすることができたのだけれど、巡業を休むわけにはいかない。飛行機の関係で、巡業の初日と2日目は休むことになってしまったけれど、3日目からは巡業に帯同したよ。

 巡業に姿を現わした僕の様子がよっぽど変だったんだろうね。横綱の白鵬関と鶴竜関が僕のところにやってきて、「ガガちゃん、大変だったね。大丈夫?」と、声をかけてくれた。もう、涙が出るほどうれしかったよ。そして、こっそりと香典まで渡してくれたんだ。

 レスリングの銀メダリストで「モンゴルの英雄」と言われた白鵬関のお父さんも、この年の4月に亡くなられた。愛する両親を近くで看取れないというつらさ。お相撲さんという仕事の性だと言ってしまえばそれまでだけど、こうした不条理が僕たちにはある。同じ外国出身力士だからこそ、気持ちがわかり合える部分もある。

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