ブルガリアから来日→角界入り即断。
琴欧洲は運命の出会いを果たした (3ページ目)
そんな生活が1週間ほど続き、航空チケットの復路の期限が近づいてきていました。すると中本さんは、「カロヤン、このまま、部屋に残って力士になるんだよな?」と言ってきたのです。
私は小さなリュックを背負い、Tシャツに短パン姿で、あくまで「体験入門」のつもりで、日本にやってきた。しかも、ブルガリアの大学に籍を置いているし、もし力士になるとしたら、両親にも説明をしなければならない。だから、一旦帰国する必要がありました。
親方には、中本さんのほうから説明してもらいました。すると親方は、私の目を見て、握手して、「オレについて来い!」と言ってくれたのです。
この人だったら、私の日本の父親になってくれるんじゃないか? と瞬間的に思いましたね。だから、もう一度握手をして、ブルガリアに帰国したのです。
この時点で、私は「力士になる」ことを決めていました。ブルガリアに帰ると、すぐに父に「日本に行って力士になる」と伝えて、大学にも休学届を出しました。
ちょうどこの頃、父が交通事故に遭い、体が不自由になったということもあって、「大相撲」で自分を磨いて、家族の生活を楽にしてあげたいという思いもあったのです。
(つづく)
鳴戸勝紀(なると・かつのり)
元大関・琴欧洲。本名:安藤カロヤン。1983年2月19日生まれ。ブルガリア出身。2mを超える長身と懐の深さを生かした豪快な取り口と、憂いのある眼差しで相撲ファンの人気を集めた。幕の内優勝1回、三賞受賞5回。2014年3月場所限りで引退、年寄・琴欧洲を襲名。同年、日本国籍を取得し、ヨーロッパ出身力士として初めて日本に帰化。2017年、鳴戸部屋を創設し、後進の指導にあたっている。
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