2019.07.07

ブルガリアから来日→角界入り即断。
琴欧洲は運命の出会いを果たした

  • 武田葉月●取材・構成 text by Takeda Hazuki

向正面から世界が見える~
大相撲・外国人力士物語
第1回:鳴戸親方(1)

 ブルガリア出身の初めての大相撲力士として、大関まで昇りつめた琴欧洲。202cmの長身、握力120kgのイケメンは、「角界のベッカム」と呼ばれて、絶大な人気を得た。

 2014年春場所(3月場所)で引退後、年寄・琴欧洲を襲名。その後、鳴戸親方となり、2017年4月、鳴戸部屋を創設。2019年6月には、東京スカイツリーの近くに4階建ての部屋を新設し、現在13名の力士たちの指導をしている。

 そんな彼の”相撲人生”を振り返る――。

       ◆       ◆       ◆

「タイムカプセルに入ったみたい!」

 故郷のブルガリアから佐渡ヶ嶽部屋に体験入門に来た時の、私の第一印象です。

 1983年、ブルガリア・ヴェリコ・タルノヴォ市で生まれた私は、レスリングの指導者だった父の影響で、12歳からレスリングを始めました。

 2000年にはジュニア欧州大会で優勝(100kg級)して、18歳でブルガリア国立スポーツ大学に入学。

「将来は、レスリングでオリンピックに行きたい」

 という夢のために、真剣にレスリングの練習に取り組んでいました。レスリング部には、ブルガリア国内の強豪たちが50人くらいいて、全員がヨーロッパチャンピオン、オリンピックチャンピオンを狙っている選手ばかりだったので、レベルはかなり高かったです。

 この大学には、ブルガリアで唯一、相撲を学ぶ専門課程があって、そこで学んでいた学生らは、私たちレスリング部の練習のあとに、まわしをつけて稽古をしていました。

 ある日、元レスリング部の先輩で相撲部に所属している先輩に、「カロヤン(私の本名)、学内の相撲大会に出てみないか?」と誘いを受けた私は、軽い気持ちで参加しました。

 ところが、この大会で、日々レスリングの練習に励んでいる体重130kgの私が、体の小さな選手に負けてしまったのです。相手は小柄な体を駆使して、相撲の技で言うと”いなしたり”しながら、私を土俵から出してしまったのです。

 なんで負けたんだ! 悔しい!

 負けたことで、逆に相撲に興味が湧いてきたんですね。

 レスリング部の練習をこなしながら、相撲の練習もして、2001年の欧州相撲選手権で3位(115kg級)、その年の11月には、日本の青森県で行なわれた世界相撲選手権で重量級(115kg以上)3位という成績を残すことができたんです。