ボルダリング・ライバル物語「同い年のスター、楢崎智亜を追いかけて」
先日のワールドカップで6位となった石松大晟 姿が見えなくなるほど遠い存在になっていたライバルの背中が前方にチラリと見えた――。
ボルダリング・ワールドカップ(以下BWC)八王子(東京)が終わってからの数日間、これまで体験したことのない筋肉痛に苛(さいな)まれながらも、その手応えを離さないようにギュッと握りしめていた。
彼の名は石松大晟(たいせい)。1996年生まれの20歳は、普段はプロフリークライマー・平山ユージ氏のクライミングジムでスタッフとして働く。6位になったBWCの翌日こそ休んだものの、その後は通常勤務に戻っている。
「決勝に残ることを目指してきたので、僕は満足しているんですが、親からのLINEはあっさりしたものでした。まぁ、優勝したわけじゃないので。ただ、佐千さん(※1)に試合後の会場で、『順位よりも、この舞台に立てたことが大きいよ』と言われて。この1年を振り返ると本当にそうだなって」
※1 安間佐千。1989年生まれのプロフリークライマー。2012年、2013年のリードWC年間王者。現在は競技を引退し、岩場での活動を精力的に行なっている。
時間を2016年まで巻き戻そう。石松は2016年1月のボルダリング・ジャパンカップ(以下BJC)で4位になり、初めてBWCのB代表の座を射止めた。ただし、S代表、A代表とは異なり、B代表は遠征費などが協会から出るわけではない。高校卒業後にクライミングで食べていくことを夢見て上京した社会人1年生にとって、同年4月に日本で行なわれるBWC加須(かぞ)に照準を合わせて、トレーニングに熱を入れるのは当然のことだった。
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