日本出身力士10年ぶりV。大関・琴奨菊の初優勝を支えた人々
大相撲初場所で大関・琴奨菊(佐渡ヶ嶽部屋)が10年ぶりの日本出身力士による優勝を飾った。2006年初場所で大関・栃東(現・玉ノ井親方)が賜杯を抱いてから10年。いかにして琴奨菊が初優勝へたどり着いたのか。その裏側に迫る。
初場所で初優勝を飾り、大杯を抱える琴奨菊
13勝1敗。単独トップで迎えた千秋楽。勝てば優勝が決まる豪栄道(境川部屋)戦でも琴奨菊は冷静だった。立ち合いで思いっきり当たると得意の左差しで土俵際まで追い込んだ。最後は右から一気の突き落とし。久々の日本出身力士による優勝に大歓声の館内。桟敷席で父・菊次一典さんが号泣する一方で、熱狂の渦の真ん中にいた主役は、表情ひとつ変えずにいた。
「まだ、信じられないのが率直な気持ちだ。しっかりとやるべきことに集中し結果を出せて満足している」
幕内最高優勝力士だけが座ることができる東の支度部屋の一番奥。落ち着いて言葉をかみしめた。10年ぶりの日本出身力士の優勝にも「たまたま自分がその時に初優勝しただけです」と浮かれることはなかった。
この落ち着きこそ琴奨菊の進化の表れだ。初優勝は創意工夫を重ねた結果と言える。2002年初場所に初土俵。新十両昇進は、2年後の04年名古屋と順調に出世した。しかし、05年初場所の新入幕から足踏みが続く。07年春に新三役に昇進し「大関候補」と期待されながら、2けた以上の勝ち星を残すことはできなかった。精神面に不安がある自分を見つめ直すために取り入れたのが、ルーティンだった。
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