【月刊・白鵬】横綱が打ち明けた「あの事件」の真相
第56回:2015年
白鵬にとって、2015年は厳しい1年だったという。2015年、今年も年3度の優勝を飾って、
優勝回数は史上最多の35回に伸ばした横綱。
しかし、土俵の外では苦難の連続だった。
その激動の1年を今、横綱が振り返る――。
早いもので、2015年もあとわずか。振り返ってみれば、1月の初場所(1月場所)を終えたあと、私はこれまでの相撲人生で味わったことのない苦境に立たされました。それで、みなさんにはご心配をおかけしたことを、まずは心からお詫びしたいと思います。
苦境のきっかけとなったのは、全勝で迎えた13日目、稀勢の里戦です。土俵際で勝負がもつれて、ほぼ同時に土俵の下に落ちました。行司さんの軍配は私に上がったのですが、審判団から物言いが付いて、結果は「同体につき、取り直し」となりました。
結局、取り直しの相撲は私が勝って、33回目の優勝を飾ることができました。しかし私は、何となく腑に落ちない思いがありました。ゆえにその晩、その日の取り組みを何度も見直しました。優勝を決めた夜ですから、本来であれば清々しい気持ちになっているはずなんですが、余計にモヤモヤした思いが膨らみました。
もちろん、「同体」という判断は、審判委員の親方たちが決めることですから、私が意見できることではありません。ただ、「同体」と判定した、その理由を説明してほしいなぁ、と思っただけなんです。
そして、そんな思いを吐露したのが、一夜明けての会見でした。批判する思いはまったくなかったのですが、口から出てしまった言葉は、いろいろな意味で配慮が欠けていました。
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