2014.09.26

フェンシング界に勢いを取り戻す「金メダル獲得」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Tsukida Jun

9月特集 アジア大会2014の発見!(13)

 9月25日、フェンシング男子フルーレ団体は決勝で中国を破り、40年ぶりの金メダルを獲得した。

 その2日前に行なわれたフェンシグ男子フルーレ個人戦で太田雄貴が3位になり、アジア大会では06年ドーハ大会の金以来となるメダルを獲得している。しかし、彼のこの大会の本当の目的は、団体戦での優勝だった。

左から三宅諒、藤野大樹、オレグコーチ、千田健太、太田雄貴は最高の笑顔を見せた「元々僕が復帰したのもそのつもりだったし、この大会は世界ランキングには反映される大会ではないけど、各国のNOC(国内オリンピック委員会)も大切にしている大会でガチンコの中国とも戦えるまたとないチャンスだったので。今は個人戦で戦うと日本人は中国の上位3人には勝てないと思うんです。でも団体なら自分たちでも勝てるんだという気持ちを持っていないと来年からの五輪レースでは勝ち上がれないと思うから。だから今回優勝して、『世界チャンピオンになった中国にも勝てるんだ』というところが欲しかったんです」

 日本男子フルーレの現在の国別世界ランキングは8位。五輪出場権は来年4月から16年4月までの1年間のランキングで決まるが、4位以上が無条件で出場できてそれ以外は大陸枠になり、最上位の1国のみに出場権が与えられる。現在アジア勢では中国が無条件で出場できる2位につけているが、韓国が5位にいて日本は8位。ロンドン五輪で銀メダルを獲っている日本だが、このままでは出場権を得られなくなってしまうという危機的状況なのだ。

「僕もロンドン五輪後は1年間試合に出なかったけど、それで国別ランキングが落ちてしまってなかなか浮上できない状態です。僕個人が勝つだけなら、『太田先輩だから』ということになってしまう。だからアジア大会では団体戦で優勝して、試合に出た選手だけではなくロンドンの代表にもなった淡路卓やその下の若選手たちに『この先輩に練習で勝てるんなら、僕たちも世界で勝てるんだ』という気持ちになってもらいたいと思っていました」

 こう話す太田によれば、選手たちもロンドン五輪で自分たちのショーが終わってしまった感じで、どこか人ごとのような、当事者意識が希薄になっていたというのだ。その空気を変えるチャンスがアジア大会だった。