葛西紀明、ノーマルヒル8位もラージヒルでの反撃に手応え

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Watanabe Kaoru/JMPA

 ソチ五輪の大会3日目、2月9日に行なわれた男子スキージャンプノーマルヒルで、葛西紀明は1本目で8位。3位と3・6点差で、十分メダルを狙える位置だったが、2本目は「やっぱり力が入っちゃいましたね。1本目にもっと上位だったら、メダル争はいい勝負になると思うけど、僅差でも8位からとなると『逆転してやろう』と力が入ってしまう」と、納得できるジャンプではなかった。

男子スキージャンプノーマルヒルで8位入賞の葛西紀明男子スキージャンプノーマルヒルで8位入賞の葛西紀明「1本目の踏み切りのタイミングの遅れは50㎝くらいだったのに、2本目は1mくらいになってしまいましたね」と言って苦笑いを浮かべた葛西は、結局8位でノーマルヒルを終えた。

 葛西の1本目のジャンプは、力みがまったくないスムーズな踏み切りで空中へ飛び出していた。追い風0・12mの条件で、飛距離は全体3番目の101・5m。105・5mを飛んだカミル・ストッフ(ポーランド)が142・0点を獲得して頭ひとつ抜け出していたが、2位以下は102・5mから99mの間に10人がひしめき、2本目で競り合う形になった。

 その接戦のなか、葛西は2本目に100mを飛んだが、風速は0でウインドファクターの加点はもらえず、順位を上げることができなかった。それでも「たしかに悔しいけど、昨日の練習と予選の変なジャンプから比べて、少しずついいジャンプができるようになりました」と笑顔を見せる。

 ソチ入りして以来、葛西は2度の公式練習を欠場していた。「疲れないように」という理由からだ。大会直前のW杯ランキングは3位で予選が免除になる、という理由もあった。そのために予選が行なわれた8日がソチでの初飛びになったのだ。

「そうしたら変なジャンプをしてしまって......。それでちょっと悩みかけましたけど、悩んでもしょうがないと思ってビデオを見返しながら修正点を探したんです。今日の試合前の試技で自分がダメだと思っていたところを直して飛んでみたら、ジャンプ自体は全然ダメだったけど飛距離は97・5mまで伸びた。それで『これならいける』という手応えをつかんだんです」

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