ジャンプ、葛西紀明7度目の五輪で「狙うは金メダル」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 千葉茂●写真 photo by Chiba Shigeru(人物) photo by AFLO SPORT(競技)

 2014年1月7日。ソチ五輪に向けてジャンプ陣の代表が発表された。その中には、7度目の五輪出場となる葛西紀明の名前も含まれていた。

現在土屋ホーム所属で、選手兼監督として選手を育てる立場でもある葛西選手現在土屋ホーム所属で、選手兼監督として選手を育てる立場でもある葛西選手 葛西といえば、41歳を迎えてもなお、現役を貫いて世界との戦いを楽しんでいるベテラン。クラシカルスタイルからV字ジャンプへ、スキーの長さやジャンプスーツのサイズの変更、BMIルール採用という激変のジャンプ史を、すべて経験している数少ないジャンパーのひとりだ。

 そんな彼がジャンプという競技にこだわり続けている理由は、オリンピックの舞台で金メダルを手にしていないことにある。そして、最大のモチベーションのなっているのが、長野五輪で金メダルを獲得したラージヒル団体のメンバーに入れなかったことだという。

「僕の方がW杯で結果を出しているし、体力も技術も上だと思っている。それなのになんで彼らが金メダルを持っていて俺には無いんだって......自分に腹が立つんです」

 自信があるからこそ、自分が許せなかった。今もその気持ちは変わらない。そう思い続けられているのは、41歳になった今も「勝ちたい!」「勝てる!」という揺るぎない自信があるからだろう。

 そんな葛西の競技人生は、高校1年でW杯や世界選手権に出場するようになって25年目、その前から数えれば30年を超える。

「振り返ってみれば、そんなに長く感じてないですね。この時の試合がどうだったか、すべて思い出せます。中3の時に宮様スキー大会国際競技会をテストジャンパーとして飛んで、同じゲートで成年組の優勝者より飛んだことや、世界ジュニアの練習ジャンプで3番以内だったのに本番は大嫌いな雨になって、ダメで悔しかったこともよく覚えていますから」と笑顔で振り返った。

 葛西と同じくベテランとして競技を続けている、43歳の岡部孝信とは小学生のころからの付き合いだ。中学1年で出た全国中学校スキー大会で、優勝は出来なかったが同じ下川中学3年の岡部孝信に勝ったことも思い出に残る、嬉しかった試合だという。

「岡部さんは小学校の時も中学校の時もずっとうまくて、ああいうジャンプをやりたいと思って目標にしていたんです。あの人も僕と同じくらいに負けず嫌いだから(全国中学校スキー大会では)すごく悔しがっていたけど、今でも岡部さんの調子が上がってきて勝てない時もあるし。そういう風にお互いを刺激し合っているので、僕のジャンプ人生の中では永遠のライバルであり、最高の先輩です。その岡部さんが金メダルを獲ってもまだやっているのだから、獲ってない僕は余計に辞められませんよね」

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