【月刊・白鵬】実り多き2013年。横綱の「5大ニュース」 (3ページ目)
支度部屋に帰ると、知人が「九州のファンが失礼な態度をとって申し訳ありません」と私に謝罪してきました。私も決して悔しい思いがなかったわけではないのですが、そのとき私が思っていたのは、こんなことでした。
「負けて騒がれる」というのは、こういうことなのか――。これが、かつて大横綱と言われた双葉山関、大鵬関、北の湖関、千代の富士関も経験してきた、いわば「横綱の道」なんだな、と。
そういう意味では、貴重な体験をさせてもらったな、と思っています。
ところで、結局2014年の初場所に持ち越された稀勢の里の横綱昇進。チャンスは十分にあると思います。先日行なわれた横綱審議委員会稽古総見でも、稀勢の里と7番取りましたが、凄まじい意欲を感じました。闘志むき出しで挑んでくる姿勢は、他の力士には見られないものでした。
ただ、こうした大事な時期に、所属している部屋の事情(※)で生活環境が変わってしまった稀勢の里。肉体的にも、精神的にも、少なからず疲労を抱えているといった話を伝え聞いています。実際、彼と相撲を取ってみて、以前よりも少しだけ足が細くなっているような気がしました。ちょっと心配ですね。
※師匠の年寄名跡変更によって、鳴戸部屋から田子ノ浦部屋所属となった稀勢の里。そのため、部屋自体を引っ越すことになり、現在は旧三保ケ関部屋(東京・墨田区)に一時移転(田子ノ浦部屋は来年、東京・江戸川区に部屋を建設予定)。稽古場所が変わり、生活環境全般がガラッと変わった。
そうは言っても、こうした逆境を乗り越えてこそ、力士として大きく成長できると思います。稀勢の里にはそれができるはずです。目の前の一番、一番に集中して、いい結果を出してほしいですね。
何はともあれ、今年も大いに盛り上がった大相撲。すべて、多くのファンのみなさんのおかげです。本当にありがとうございました。来年も、みなさんに喜んでいただけるよう、全力を尽くしていきたいと思っています。
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