五輪開催都市決定前夜。ブエノスアイレス市民が見た「日本」

  • 三村高之●文 photo&text by Mimura Takayuki

 IOC総会開幕を控えた9月2日、猪瀬東京都知事が現地のブエノスアイレスに到着。長旅の疲れもみせず、夕方から約3キロメートルのジョギングを行なった。コースはプエルト・マデーロと呼ばれる再開発されたウォーターフロントの遊歩道。日本から来た多くの報道陣も、ムービーやカメラで知事を撮りながら一緒に走る。この異様な光景にポルテーニョ(ブエノスアイレスっ子)は、「いったい何事だ。あれは誰だ」と興味津津の様子。走る一団の全員がアジア人なので、中国の映画スターだと思った人も多かった。

アルゼンチン在住の日系人も招致活動にひと役買っているアルゼンチン在住の日系人も招致活動にひと役買っている「東京都の知事だ」と教えても、ピンと来る人は皆無だった。自国と直接関係ないことなので、IOC総会が開かれ、2020年五輪の開催地が東京、マドリード、イスタンブールのどこかに決まること自体、この時点ではあまり一般市民には知られていなかった。

 総会のことが初めてニュースのネタになったのは、その翌日の夜のこと。もっともメインは、「メッシがマドリードを支援した」ということで、それに付随する形で、7日の投票で開催地が決まることなどが報じられた。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る