【ミラノ五輪】坂本花織は一日にして成らず 今季最高得点で団体メダルへ「いいスタートダッシュ」 (2ページ目)
【坂本花織は一日にして成らず】
リュウが高得点を出したあとにリンクに入った坂本は、落ち着き払っていた。今シーズン限りで引退を発表している彼女が選んだ『Time To Say Goodbye』が特別な響きで鳴り出す。
冒頭、3回転ルッツはアテンションがついたことを本人は悔しがったが、きれいに着氷した。フライングキャメルスピンでは違う生きもののように腕をしならせる。上半身をぎりぎりまで反らし、飛距離の出る自慢のダブルアクセルも成功。
3回転フリップ+3回転トーループの大技を難なく降りた。足替えコンビネーションスピンはレベル4、ステップシークエンスでは笑顔さえ出ていた。最後のレイバックスピンもレベル4で、最後は左腕を軽く突き上げた。
「『よっしゃー』よりも『ホッとした』が強くて」
坂本はそう振り返ったが、冷静に燃えていた。プログラムコンポーネンツ(演技構成点)で、構成、表現、スケート技術とすべての項目が9点だったのは特筆すべきだろう。たとえばリュウはふたつの項目に8点台もあった。それだけ、精度の高い演技だったと言える。
「10点マックスのポイントを取るというのは、自分自身にプレッシャーをかけてやってきました。やるべきことをやろうという思いで。過度のプレッシャーにはならず、いい具合の緊張感だったと思います」
坂本はそう明かしていたが、そこまでの境地にたどり着くことができたのは、彼女が相応の成功と失敗を繰り返してきただろう。坂本の道は一日では成らない。
「(2018年)平昌五輪で団体を初めて経験し、当時は出られているだけですごいって思っていて、(予選を通過して)フリーまで滑れてすごいって。それが4年間でみんながレベルアップし、(2022年)北京五輪では予期せぬメダル(銀)を獲れました。みんなが頑張ればメダルを獲れると気づけて、そこからはりくりゅう、優真くんと『さらにレベルアップ』と団体の話をするようになって、ミラノでは大会1日目でいいスタートを切れました。4年前から目指していたものに近づけている実感があって誇らしいですね」
坂本はそう言って笑顔をつくった。彼女は自分史のなかで、つねに新しい挑戦と向き合い、適応し、乗り越え、結果を出してきた。それは経験と一口にいうが、歴史に近い。成し遂げてきた歴史が彼女を支えるのだ。
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