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町田樹が競技人生をかけてつかんだソチ五輪の切符「ふだん自分のことが好きではないけど今日は好きになりたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【4回転ジャンプの時代でも表現力を追求】

 当時の不調の要因は、4回転トーループが不安定だったこと。拠点としたアメリカのアイスキャッスルは標高1500mと高い。高地では簡単に跳べていても、平地では体が重く感じて跳べないというギャップに苦しんでいたのだ。

 さらにプログラムの振り付けは、フリーの『ドン・キホーテ』をステファン・ランビエール氏に依頼し新しい表現に挑戦したが、細やかな筋肉の使い方や動きをするなかで難しさを感じ、結果を出せなかった。

だが、自身が尊敬するランビエール氏の振り付けを経験したことが、町田を成長させた。

「ステファンはジャンプもスピンもすごいですが、それ以上に表現力に魅せられました。僕はこれまでけっこう力強い表現が多かったけれど、彼のおかげでしなやかさやきれいな滑り、音の取り方、体の動かし方をすごく学びました」

 アイスキャッスル2年目には環境や練習方法にも慣れ、4回転ジャンプのイメージも固まってきた。SPはランビエール氏振り付けの『F・U・Y・A』、フリーは初めて組む元バレエダンサーのフィリップ・ミルズ氏による振り付けの『火の鳥』で新シーズンへ挑んだ。

「4回転ジャンプは大きな得点源だから、もちろんこれから先は絶対に必要だと思います。でも最近は、ジャンプに意識が偏りすぎて表現を置き去りにしている風潮もあると感じています。表現力を軽く扱うようなことはなく、同じ密度で4回転も入れなければいけない時代になってほしいと思うので、すごく大変だと思うけれど、僕はそこを追求したい」

 そして、ソチ五輪へ向けても、国内に強力なライバルたちがそろっている状況を踏まえて、こう話していた。

「上の選手たちは表現やジャンプの技術だけでなく、試合での緊張のコントロールもすごくうまい。僕はまだ何ひとつ追いついていないと思うから本当にコツコツといきたい。まずは本当の意味で、彼らの真のライバルになれたらいいなと思います」

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