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木原龍一・三浦璃来"りくりゅう"のカギは「まあ、いいか」マインド? ミラノ・コルティナ五輪へ好発進 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【「これはいける」練習に裏打ちされた自信】

 翌7日のフリーは、新プログラムの『グラディエーター』。ふたりとも好きで「やってみたい」と話していたが、コーチたちから「少し違うのでは?」と言われて、一時は「自分たちには合わない」と諦めていた曲だ。

 だが今季は、映画『グラディエーター』のイメージとは違う解釈を、振付師のマリー=フランス・デュブレイユ氏から提案されて挑戦することになった。

「ふたりともいい緊張感で、自分たちのエレメンツやスケーティングに自信を持っていたので、練習前と試合前の空気感も本当によかった。これはいけるなと思っていました」(三浦)

「夏にしっかり練習してきたので、それを信じようと。やってきたことは確かなことだったから、それを出せばいいだけだと話をしていました」(木原)

 こう話すふたりの滑りに、迷いはいっさいなかった。SPと同じように、スピードに乗ったキレのある滑りと動きでGOE(出来ばえ点)加点も確実に稼ぐ演技。後半の3回転サルコウは三浦が両足着氷になり、そのあとのスロー3回転ループは転倒というミスはあったものの、最後は木原が横になり三浦の体を両手で差し上げるドラマチックなポーズでフィニッシュ。

 フリーの得点は143.00点で合計は222.94点。昨季の世界選手権4位のアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ(ジョージア)をさらに突き放して10.04点差で優勝した。

「エレメンツも違っているなかで、昨季の世界国別対抗戦と同じくらいの点数をミスがあったものの初戦から出せるようになったのは大きい。昨季は、199.55点だった初戦のチャレンジャー・シリーズ(ロンバルディア杯)から、少しずつは積み上げていったものがようやく世界選手権や世界国別対抗戦で評価をいただけるようになっていた。でも、今季は早い段階からいい点数を積み上げられているので、これから試合を進めることによって徐々にステップアップできていければいいのかなと思います」

 このように納得の言葉を口にする木原は、今回のミスの原因について、「衣装が届くのがギリギリになってしまい、それを着るのはこの試合が初めてだったのでその部分で不安も出ていた。慣れていない衣装の関係でグリップがうまく入っていない箇所がいくつかあったので、そこは修正しないといけないです。技術的な問題は正直ないと思うけど、衣装を着たことによって変わってくる感覚を練習しないといけないと思います」と冷静に分析する。

 準備万端で自信を持って臨めている今季。そして、その成果を国際大会初戦で実感できたからこそ、ミラノ・コルティナ五輪へ向けても、冷静に構えて一歩一歩進んでいけるだろう。

 今後は、9月下旬のネーベルホルン杯を経て、GPシリーズは第1戦フランス杯と第5戦スケートアメリカに出場する予定の「りくりゅう」。12月のGPファイナル・名古屋大会では、さらに充実した姿を日本のファンにも見せてくれるはずだ。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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