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宇野昌磨が「最初で最後」と挑んだ『Ice Brave』の続編決定 『ワンピース・オン・アイス』で得た経験が生きている (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【ファンと呼吸を合わせて120%を発揮】

「試合の時よりも、皆さんの大きな歓声が聞こえてきます。大きな声でレスポンスが返ってくるので、皆さんにいいものを届けられているんだって思えますね。そこはアイスショーのよさだなって」

 宇野は言う。リンクでファンと対話するようなマイクパフォーマンスで顕著なように、彼は会場にいる人々を強く意識するようになっている。お互いが呼吸を合わせるようにショーを盛り上げ、信じられないような熱量をひとつの空間に生み出す。プロデューサーの面目躍如だ。

「(他のショーと)熱量を比較するものではないですけど、『Ice Brave』は信じられないくらい大変で。その大変さからくる自信というのはあるかもしれません。それで力を100%出せるというか。そこでお客さんの大きな声や拍手を受けると、さらに120%まで、これ以上は無理というところまで毎回出しちゃうんです」

 宇野はそう言って、明るく笑っている。

 彼は変身を遂げつつあるが、滑ることに真摯な姿は現役時代とは変わっていない。どこまでも自分を追い込むことで、100%の最大出力に挑む。練習だけが裏切らず、試合だけうまくいくという甘さはない。その生きざまが、今も多くの人に愛されるし、熱気も味方にできる。

 今回の『Ice Brave』、それは競技者時代にたとえるなら、ショートプログラムとフリーをそろえて高得点を出したようなものかもしれない。『Ice Brave 2』開催決定は、"最初で最後"の気概で勝ち獲った栄冠だ。

「正直、『だよね』と思いました(笑)。それだけいいものができたので、ガチなリアクションだと、まあまあそうなるよなって......まあ半分は冗談ですけど(笑)。発表はしましたけど、中身はまだ決まっていないですし、これから考えていこうかなって」

 続編決定について彼ははぐらかすように言う。つかみどころがない。だから、何者にでもなれるのか。

 次回作に向けた情報は、7月18日、トヨタイムズスポーツで生配信されるという。

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中編につづく

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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