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宇野昌磨が「最初で最後」と挑んだ『Ice Brave』の続編決定 『ワンピース・オン・アイス』で得た経験が生きている (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【「最初で最後」背水の陣が奏功】

 結果として、ショーは高い評価を受けて続編の『Ice Brave 2』開催が決まっている。

「他はわからないですけど、『Ice Brave』は世界で一番、大変なショーだと思っているし、これできたらなんでもできそうっていうショーになったはずです」

 千秋楽を終えたあとの宇野は、胸を張って言った。休憩なしのノンストップ。初回公演から回数を重ねるたび、ショーの内容は充実し、精度も格段に上がった。その充実感が表情にも出て、白い肌は艶めいていた。

「これだけ長い期間をかけて、大勢でつくるっていう経験は初めてで。時間をかければかけるほど、これがいいかな、このほうがいいかなって試行錯誤してきたからこそ、いろんな思いが入ってきました。それに実際の公演で、お客さんの前で、この演技にはこういう反応が得られるというのが回を経るごとにわかって。

 いろんなものをレベルアップさせたいって(気持ちに)なったし、たくさんの方が見てくれて、より自分たちしかできないアイスショーをと思うようになりました」

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 自らに縛りをかける"背水の陣"の姿勢が功を奏した。

 宇野は朗らかでマイペースな性格だが、"スケートを生きる"という一点に関しては、隠せないほどの野性味がにじみ出す。その本気がキャスト、スタッフ全員に伝わり、ひとつの作品になった。楽曲リスト終盤の『ボレロⅣ』は、現役時代以上に壮大な音楽に全身で反応するハードな疾走感で、ショー全体の世界観を包み込んでいた。

 引退前後、宇野は表現者としてすでにフロンティアを越えている。2023年、2024年には『ワンピース・オン・アイス』で主役のモンキー・D・ルフィを演じた。役柄を演じることによって、彼の表現の幅は広がった。

ーールフィを演じた経験は今回の『Ice Brave』にも生きていますか?

 公演発表のインタビューでそう尋ねた時、彼は意を得たように答えていた。

「生きていますね、かなり。『ワンピース・オン・アイス』は初めての経験だったんですよ。あんなに長い時間をリハーサルにかけて、みんなでひとつのことをするって。まさに団体競技って感じで。自分はフィギュアスケートという個人競技で、自分と向き合い続けるというのをずっとしてきました。それが、全員で同じ方向へ向かって進むことができて。はじめはあまり会話もしなかった者同士が、終わった頃には友人というか、ひとつの目標に向かって進む仲間でした。

 今回の『Ice Brave』でも、仲間という言葉を使わせてもらっているのは、それが自分にとって一番理想的な関係だからです。『ワンピース・オン・アイス』で得た全員で頑張る楽しさは大きいですし、競技じゃなくてアイスショーでもこれだけの熱量でつくり上げられる楽しさを知ることができました。そこは、『Ice Brave』にも生きています」

 彼はエンターテイナーとして、さらなる成長を遂げつつある。

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