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【フィギュア】王者イリア・マリニンの日本勢への思い「鍵山優真の技術はお手本」「三浦佳生はおもしろい男」五輪への計画も語る (3ページ目)

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

【五輪王者の先にある目標とは?】

ーーいよいよ来季は五輪シーズンですが、今回の優勝を、ミラノ・コルティナ五輪にどうつなげていきたいですか?

 この優勝はゴールではありません。来季の五輪に向けて、自分がどのように戦うかを見極めるためのシーズンでした。五輪へは、とにかく最大効率の練習を積み重ね、そして万全のシミュレーションをしていくことです。ジャンプ、スケーティング、演技すべての要素をどこまで磨くことができるか。今季より戦略的に挑むと思います。

ーー五輪の金メダルは、スケート人生におけるひとつの目標ですか?

 スケート人生最大の夢かというと、違う気がしています。五輪は間違いなく、大きな目標のひとつ。でも最大ではない。若い頃は、五輪は最終目標だとずっと思っていましたし、五輪で金メダルを獲った先には、何もないと思っていました。でも、今は違います。五輪王者として世間に知ってもらうこと、そして人に感動を与えることで、フィギュアスケートという競技そのものに影響を与えられると思う。そこに目標があります。

ーー元フィギュアスケーターのご両親も五輪経験者です。体験談などを聞くことはありますか?

 不思議なことに、両親は五輪の経験をまったく話してくれません。もしかしたら、五輪が近づくにつれて、何かを話してくれるのかもしれません。ただ、五輪を特別だと考えず、「ほかの大会と同じように自分のベストを尽くせ」という意味なのかも知れません。

ーー五輪でも「7本の4回転」に挑むプランでしょうか?

 やはり来季は戦略的な計画を立て、僕が本当にやりたいことを、ブレインストーミング(アイデアを出し合い、新しいアイデアを模索すること)する必要があると思います。「7本の4回転」については、世間的にはさまざまな意見があるとは思いますが、僕にとっては理想の結晶なんです。でも、僕の体調や完成度次第だし、リスクが大きすぎると感じたら、計画を変更しなければならない。いろいろな選択肢はありますが、ネガティブな思考ではなく、いかにポジティブに選択できるかが大切だと思います。

ーー今大会でチームUSAは3種目(男子、女子、アイスダンス)で優勝し、来季のミラノ・コルティナ五輪の団体戦への期待が高まっていると思います。

 4種目のうち3種目でアメリカが世界王者となったことには、とても興奮しています。そしてチームUSAがお互いを支え合っていることの証明でもあります。この母国開催のイベントで、お互いを応援し、力を発揮できるようにサポートし合ってきました。チームUSAは家族のように絆が深まり、来年の五輪を心待ちにしています。

ーーありがとうございました。まずは「スターズ・オン・アイス」と世界国別対抗戦での演技を楽しみにしています。

終わり

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<プロフィール>
イリア・マリニン/2004年、アメリカ・バージニア州生まれ。2022−2023シーズンからシニアへ移行し、USインターナショナルクラシックで史上初の4回転アクセルを成功。2023−2024シーズンにGPファイナルと世界選手権で初優勝。2024−2025シーズンはGPファイナルや世界選手権など出場した全試合で優勝している。

著者プロフィール

  •  野口美惠

    野口美惠 (のぐち・よしえ)

    元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。2011年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。

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