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りくりゅうが築くペア新時代 「感慨深い」全日本制覇で見せた本物のたくましさ (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【後半戦へ自分たちを超えていく】

 翌日のフリーでりくりゅうは、『Adios』の叙情的な旋律に乗って、リンクを舞っている。スペイン語で「さよなら」の意味で、その決別は野心的に挑む思いを歌っているが、何より彼らの演技はたくましかった。

 たとえば、木原のトーループがステップアウトになり、3回転トーループ+ダブルアクセル+ダブルアクセルを取りこぼしたが、むしろ、そこから集中力を高めた。

 最初のリフトはレベル4、スロージャンプは3回転ループを成功。スピンもレベル4で、サイドバイサイドで3回転サルコウもみごとに決めた。次のリフトも華麗でレベル4だった。スローでの3回転ルッツ、3本目のリフトもレベル4、最後はコレオで作品を仕上げた。

「序盤にミスがあっても、引きずらずに演技ができたのはよかったなって。大きな得点源はなくなってしまいましたが、今シーズン一番高い点数をもらえました。これは後半戦に向け、大きな自信になると思います」

 三浦はそう振り返っている。彼女は淡々としたなかに熱さを内包させ、寛容で明るい強さがあった。演技直後、「疲労と申し訳なさで立てなかった」とひざまずいた木原の頭を優しく撫でた。

 シーズン後半戦に向け、りくりゅうはプログラムを通してさらに滑り込むという。トランジションの改善や靴の変更など、それぞれが「1点でも、"りくりゅう"を超えるため」に競技と向き合う。その真摯な姿勢が、フィギュアスケート界全体を刺激するはずだ。

「(りくりゅうと)同じ表彰台に乗ることができて、うれしかったです!」(長岡)

「りくりゅう先輩の1個下はモチベーションになるし、海外の試合でも一緒に(表彰台に)乗れるように!」(森口)

 後輩たちも、背中を追いかけている。活気が生まれる。そのつながりが、りくりゅうをも強くするはずだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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