検索

イリア・マリニンが「僕に一番似ている」と言う日本選手とは? 王者の夢は「フィギュアスケートを大人気に」 (3ページ目)

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

【試合で変化と成長を示していく】

ーーいまや6種類の4回転を跳べる世界王者として、地位を固めている状況です。ここまでの道のりを振り返って、いかがでしょう?

 僕が「世界で戦うんだ」という自覚を持ったのは、つい5年前のことです。それまではずっとレクリエーションのスケーターの気分でした。成績が出ずにつらい時期も長くて、本当にスケートをやめたいと思ったことが何度もありました。でも両親がそばにいて、支えてくれました。そして的確なアドバイスと自信を与えてくれたことで、新たな気持ちで戦ってきました。

ーーご両親はウズベキスタン出身の有名なスケーターで、コーチを務めていますね。それぞれの役割は?

 いつもふたり一緒に教えてくれています。母はサルコウ、ループ、ルッツが得意で、父はアクセル、トーループ、フリップが得意なんです。だからちょうど半々くらいで指導してくれています。ただ、教え方は違います。母はとっても厳しいです。どんな状況であろうと「もっとできるわ」と背中を押してくれます。父は本当に穏やかで、僕の気分が乗らない時は、それが助けになることもあります。うまく行かない時に、自分でいったん受け止めて考える時間や、客観的な意見はとても重要ですから。でも、やはりここまで上達し、スケートを続けてこられたのは、母が「とにかく一生懸命にやれ」と言い続けてくれたおかげだと思います。

ーーこれまでのスケート人生で、ご両親から受け止めた一番のメッセージは?

 毎日練習を続けること、そしてつらいこともあることを知り、それを受け止めて乗り越えること、です。タイトルを獲ったことで、両親は僕のことを誇りに思ってくれていますが、僕のほうこそ、両親にとても感謝しています。僕がどんなに落ちこんでいてもリンクに連れてきて、指導してくれて、つらい時期を乗り越えさせてくれました。

ーー12月2日に20歳になりました。どんな誕生日でしたか、そして20歳の決意はありますか?

 誕生日は、GPファイナルの直前だったので、ひたすら練習していました。たくさん練習することが、僕へのプレゼントだったと思います。4回転も好きなだけ跳びました。20歳になり、まだ目指すスタイルは見つけられていません。ただ僕は、自分自身に費やした努力と、このチームに感謝をしたい。一つひとつの試合で、どんな努力をし、どんな変化と成長をしたかを示し続けていきたいと思います。

終わり

前編を読む

【プロフィール】
イリア・マリニン Ilia Malinin 
2004年、アメリカ・バージニア州生まれ。2022−2023シーズンからシニアへ移行し、USインターナショナルクラシックで史上初の4回転アクセルを成功。2023−2024シーズンにGPファイナルと世界選手権で初優勝。2024−2025シーズンはここまで、GPシリーズ・スケートアメリカ、スケートカナダ、GPファイナルなどで優勝を飾っている。

著者プロフィール

  •  野口美惠

    野口美惠 (のぐち・よしえ)

    元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。2011年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る