伊藤みどりがフィギュア男子の推しに「もっと爆走してほしい」 バックフリップ解禁についての見解も示す (4ページ目)
【誰もがケガなく五輪を目指せるように】
男子は4回転ジャンパーが続々と育ち、ハイレベルな時代を迎えています。世界王者のイリア・マリニンさん(アメリカ)は、4種類、5種類もの4回転を次々と決め、才能もスタミナもすごいです。
アクセルの跳び方は私と違い、あまりスピードを出さずに真上に踏みきるタイプで、今の時代の選手という印象ですね。マリニンさんは、すでに全種類の4回転を成功させていて、今季は滑りの美しさや表現力を身につけることに集中している様子。昨季に比べて凝ったプログラムに挑戦し、向上心の耐えない選手です。
最強とも言えるマリニンさんをいかに超えていくか、日本男子は戦略が問われています。4回転ジャンプ1〜2本分の差を、どうやって埋め、超えていくか。やはりスケーティング技術や演技力がカギになっていくでしょう。鍵山君は滑りとジャンプの安定感、佐藤君は美しいジャンプ、三浦君はパワフルさで、自分の個性をそれぞれ追求しています。
個人的に気になっているのは、ルール変更で解禁されたバックフリップ(宙返り)。本当に必要なのかな、と思っています。私の時代はスルヤ・ボナリーさんがやっていましたが、ジャンプより飛距離があるぶん、公式練習のときに近くで練習されると逃げられません。
また選手本人にとっても、演技中の疲れているときに跳ぶのは、負担が大きいでしょう。誰かがケガしてからでは遅い。アダム・シャオ イム ファさん(フランス)やマリニンさんほどの才能ある選手がケガをするのは見たくないですし、私はこわごわとした思いです。
いずれにしても、ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けて、男子は高難度の4回転を何本も入れ、さらに芸術性も求められる、とても大変な時代です。ケガのリスクが大きい技がいくつもあるので、すべての選手がケガなく、自分の力を発揮しながら五輪を目指していけることを願ってやみません。
【プロフィール】
伊藤みどり いとう・みどり
1969年、愛知県生まれ。6歳からフィギュアスケートの競技会への参加を開始し、小学4年の時、全日本ジュニア選手権で優勝し、シニアの全日本選手権で3位。1985年の全日本選手権で初優勝し、以後8連覇。1988年カルガリー五輪で5位入賞。同年には女子選手として初めてトリプルアクセルを成功させる。1989年、世界選手権で日本人初の金メダルを獲得。1992年アルベールビル五輪で銀メダルを獲得後、プロスケーターに転向。その後、アマチュアに復帰し1996年の全日本選手権で9回目の優勝を果たしたのち引退。現在は指導や普及に努めながら、国際アダルト・フィギュアスケート選手権にも出場し部門別優勝も果たしている。
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