坂本花織はロシア勢が復帰しても「勝ち続けたい」世界選手権3連覇の軌跡を振り返る (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【常に勝ち続ける難しさ】

 坂本は、これまでの世界選手権について問われ、初めて優勝した2022年大会をこう振り返った。

「初めての優勝は(北京)五輪シーズンで、その時の世界選手権の1カ月前に五輪があって燃え尽きていたので気持ち的にしんどい部分がたくさんありました。その間にロシア勢が出られなくなったりいろいろ状況が変わってしまい、自分が勝たないといけないという気持ちになってさらにナーバスになってしまった。でも、その世界選手権は最後の最後までやりきった気持ちがすごくあったので、たぶん一番うれしかったと思います」

 2022年は樋口新葉がケガのため11位にとどまり、最終滑走の坂本は2位以上でなければ翌年の世界選手権で日本の3枠獲得が果たせない重圧も大きかった。そんな状況で出した236.09点は、2018−2019シーズンからの新ルールでは歴代6位の得点。4回転ジャンプやトリプルアクセルがない構成で、「大技がなくてもここまでいける」と確認できた大会だった。

 そして2023年大会は、フリー後半の3回転+3回転の連続ジャンプでミスが出て、イ・ヘインに追い上げられる形になったが、224.61点で優勝。

 坂本は「五輪シーズンが終わったあとでそれこそまた燃え尽きて、GPファイナルまでは本調子じゃなかった。でも世界選手権連覇をしたいっていう気持ちがあり、葛藤を乗り越えての優勝だったけど、去年は本当に苦しい......。自分が一番やりたくなかったミスをしてしまって、悔しさの残る優勝でした」と振り返る。

 そして、納得できるオフシーズンを過ごして臨んだ今季は好調な滑り出しだった。

「今シーズンはずっと調子がよかったので、ショート4位になった時に好調を維持し続ける難しさを感じました。必ずしもショート、フリーとも1位で総合1位になるわけではない経験ができて、常に勝ち続ける難しさを感じた優勝だったと思いました」

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