高橋大輔は指導者としては超ストイック? 次世代への継承を長光歌子と考える (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki

【若手選手たちが継承していること】

ーー三宅選手は、高橋さんから「強気に戦うことを教わった」という記事を読みました。

 あれはサルコウをどうするかっていう話で。近畿選手権でのねん挫もあって、4回転を回避することになったんですが、フリー中盤の3回転サルコウは調子が悪く、当日朝の練習も確率があまりよくなくて。

 星南がオーダーを変更するかどうか聞いたところ、大輔が「そのままでいこう、大丈夫」って。結局、3回転サルコウはステップアウトしたんですが、本人にしたら「逃げずによかった」と。全日本で、星南は公式練習で思うように跳べずにいたんですが、試合ではしっかり決めて、開き直りを覚えたかなって思います。

ーー高橋さんが、フィギュア界の後進たちに与えている影響は計り知れません。今年2月、福岡で行なわれた高橋大輔プロデュースのアイスショー『滑走屋』でも、アンサンブルスケーターに大勢の若手を登用し、成長を促し、舞台に立つ機会を与えていました。

 大輔が、そういうことを感じていてくれたら、自分も指導者として誇らしいですね。『滑走屋』のゲネプロではみんな泣きそうなくらい、よく幕を上げられたな、という感じだったようですね。かなり難しいことをしていましたから。

 ダンスの選手は、全部カウントして踊るんですが、シングルスケーターは、ダーンと走ってバーンって手上げて、ジャーンって降りろ、というプログラムの作り方している場合も多く......。振り付けをしてくださった鈴木ゆまさんも相当に大変だったと思います。でも、若い選手たちも日々よくなって、すばらしい出来になっていました。

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【プロフィール】
長光歌子 ながみつ・うたこ 
1951年、兵庫県生まれ。自身の現役時代には、全日本ジュニア優勝、全日本選手権6位など活躍。引退後はコーチ兼振付師として活動し、数多くのトップ選手を育てる。バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔が中学時代からコーチを務めた。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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