「曲に体の細胞が全部反応している!」高橋大輔の演技に長光歌子が感じた才能とは
フィギュアスケート・長光歌子インタビュー第1回(全4回)
長光歌子コーチは、50年以上にわたってフィギュアスケート界で指導者を続けてきた。
浅沼まり、今川知子、澤田亜紀、田中刑事、三宅星南など男女を問わず、五輪出場や全日本選手権で上位に入るトップスケーターたちを数多く輩出している。なかでも、高橋大輔とは二人三脚で、日本男子初の五輪メダル、世界選手権優勝、グランプリファイナル優勝と、華々しく男子フィギュアの歴史を変えた。名伯楽と言えるわけだが......。
「皆さんが築いてきたもののあとに、私たちがいるだけだと思っています」
長光は謙虚にそう言って、今も指導を続けるが、その経験からくる言葉には宝玉の輝きがある。そこで今回は連作インタビューで、先駆者である高橋との逸話を中心に、「フィギュアスケート界の昔と今」を語ってもらった。そこから見えてくる未来もあるはずだーー。
第1回は、不世出のフィギュアスケーター、高橋大輔の実像に迫った。
「(高橋)大輔の人生はいろんなことが伏線のように絡み合っていて、漫画でも小説でもないような物語になっている気がします」
長光は言う。彼女が見つめてきたのは、筋書きのない、とっておきのドラマだった。
2012年GPファイナルの高橋大輔と長光歌子コーチ。日本男子初の優勝を飾った photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。