高橋大輔に若手からひと言「ダンスがうますぎてマネできない」 アイスショーで見せた革新性 (5ページ目)
【新しいスケートの見せ方を探求】
今回のショーでは、アンサンブルスケーターに混ざって、彼らをけん引するシーンもあった。スケーターが持つ技量を最大限に引き出していた。
「陸でできるのに氷の上でできない、氷の上でできるのに陸でできない(動き)というのはあります。でも、ふたつが融合した新しいものがたくさん生まれたなって」
村上はそう言って、『滑走屋』で起きたカタルシスを説明した。それは表現者である高橋が、スケート界に起こそうとしている革新の一部だ。
「曲、(場面の)転換、緩急をたくさん使い、休憩なく走り回って次に行って、という75分で。ただ、そのなかで気持ちは切り替えて表現しないと、ひとつの作品がバラバラになってしまう。そこでの気持ちの作り方の大切さも気づかされました。フロアから(氷の上に)下ろすことで生まれる新しいスケートの見せ方、それを一人ひとりが9回の公演が終わるまでにも見つけていければ」
ショーのフィナーレ、光に満ちたリンクでスケーターたちは表情を輝かせる。時代を切り拓いたフィギュアスケーター、高橋の世界観が濃厚に映し出されるはずだ。
『滑走屋』は、オーヴィジョンアイスアリーナ福岡で2月10日から12日までの3日間、9公演が予定されている。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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