13歳の新星、28歳のベテラン...全日本フィギュアスケート女子のアナザーストーリー (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【次世代の星は「まだまだ挑戦者」】

 吉田陽菜(18歳/木下アカデミー)は、今季のグランプリ(GP)ファイナル3位の看板を提げ、全日本に乗り込んできた。トリプルアクセルを武器にした次世代の星だ。

 しかし全日本のSPでは、冒頭トリプルアクセルで転倒し、3回転ルッツ+3回転トーループも回転不足で加点がつかず、苦戦を強いられた。62.73点で9位スタート。今シーズン、フリーでごぼう抜きする逆転劇をつくってきただけに、再現が期待されたが......。

 フリーはプログラムのテーマ「鶴」になりきった。6本のジャンプをみごとに着氷した。しかしトリプルアクセルがシングルになり、131.49点と6位。合計194.22点で7位と、大きな巻き返しはならなかった。

「(GPファイナル3位も)プレッシャーは変わらず、立場もまだまだ挑戦者で。勝負だと思って強気にいったんですが、今回は弱い部分が出てしまいました。すべての試合を全力で戦い抜くのを目標に戦ってきた結果、ファイナルにいかせてもらったんですが。いけると思っていなかったので、中国杯までですべて出しきろうと練習で追い込んでいて......」

 吉田はそう言うと、嗚咽に声を震わせた。

「連戦は大変で、ファイナルから全日本まで、うまくコンディションを合わせられませんでした。シニアでショート・フリーでのアクセルを挑戦してみて、フリーだけとは全然違って。でも男の子たちも4回転をショート・フリーでやって、昨日もその演技を見て勇気をもらいました。一緒に練習したことのある(鍵山)優真くん、(山本)草太くん、(宇野)昌磨くん、みんな練習から本当にすごいので、自分もそういう勇気を与えられる選手になりたいです」

 それは決意表明だった。

「全日本は1年を通しても大切な試合で、来年は全日本で表彰台を狙える実力をつけて戻ってきたいです」

 そのエピローグは、次の全日本の物語のプロローグになるはずだ。

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