13歳の新星、28歳のベテラン...全日本フィギュアスケート女子のアナザーストーリー (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【吸って吐いて...開花した才能】

 山下真瑚(20歳/中京大)は、SPで69.92点と2位に躍進。3回転ルッツ+3回転トーループと難度の高いジャンプで高得点をたたき出し、脚光を浴びた。7回目の全日本でSP最高位だ。

「全然、緊張しなくて。6分間(練習)の時からすごく楽しくて、お客さんに見てもらえるのは幸せ。久しぶりに後半のグループ、メンバーで、やっぱり強化選手ってすごいなって思いました。お客さんも多くて、自分も同じところにいられて幸せだなって」

 山下はおっとりした口調で言った。2018年世界ジュニア選手権、山下はアレクサンドラ・トゥルソワ、アリョーナ・コストルナヤのロシア勢ふたりに次いで3位に入っている。天性の才能がいよいよ開花した空気もあったが......。

 滑りが改善した理由は、マイペースな彼女らしい。

「息がすごく止まっちゃうんですよ、真瑚は」

 今大会、取材エリアが一番和やかになったフレーズかもしれない。

「ちょっと前にトレーニングしていてトレーナーさんに、『曲かけで息が止まっている』と言われて。気をつけたら、その日から調子がよくて、ショートもフリーも息をするのが大事だなって思いました。今まで呼吸を意識したことはなくて、最後で息が切れちゃうのが多かったんです。最初から呼吸を意識して、吸って吐いてをプログラムのなかでやると、最後で動けなくなることなくなりました」

 結局、フリーはジャンプの回転不足や転倒が響いて、12位と点数は伸びなかった。それでも、総合8位は5大会ぶりのひと桁順位だ。

「すごくフリーが苦手なので、来年もこのグループにいられるような成績や滑りをできるようにしたいです」

 山下は言う。勝ち筋は見えてきた。

「去年、今年の前半までは体力がないなと思っていたんですけど、だいぶ体力はついてきました。ちょっとずつジャンプが安定してケガもしなくなって、メンタルも安定してきたかなと思います。ルッツトー(3回転ルッツ+3回転トーループ)を2本、前半と後半に入れられる人は少ないと思うので、それをしっかりとできるように、強みにしたいです」

 呼吸も忘れずに。

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