13歳の新星、28歳のベテラン...全日本フィギュアスケート女子のアナザーストーリー

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 長野・ビッグハットで開催されたフィギュアスケートの全日本選手権、女子シングルのスケーターたちは咲き誇る氷上の花のようだった。フィギュアスケーターの誰もが目指す「全日本」という特別な舞台装置で、それぞれが輝きを放っていた。色も艶も混ざり合い、それは美しい絵巻のようにーー。

【好きがあふれ出る28歳のベテラン】

 大庭雅(28歳/東海東京FH)は、大会開幕前日練習から弾けるような笑顔を振りまき、「リンクに立てる幸せ」を放っていた。大会出場選手で最年長だが擦れていないというのか。女子選手は19〜20歳が平均年齢で10代選手も多く、大学卒業で競技から離れるケースが多い。

「スケートが好き」。彼女は、その思いを極めてきたのだろう。だからこそ、会場で温かい拍手を受ける。その笑顔はさらに増し、幸せな風景が広がる。それはひとつの定理だ。

全日本選手権12回目の出場となった大庭雅全日本選手権12回目の出場となった大庭雅この記事に関連する写真を見る 大庭はショートプログラム(SP)24位と、16歳のジュニア選手を0.60点上回ってギリギリでフリーに進んでいる。その舞台をつかむ姿は気高かった。出場選手中最多12回目の出場はダテではない。

 もっとも、真骨頂は順位や点数を超えたところにある。フリーは流れのなかに要素が組み込まれ、スパイラルは際立って美しかった。トップバッターでは異例の温かい拍手を浴びた。満面の笑みで観客席に手を振り、コーチと抱擁を交わす姿は恍惚感があった。

"スケートを生きる"。彼女はそれを体現していた。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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