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青木祐奈が「全日本ビリのどん底」から取り戻した輝き 新設アカデミーへの環境変更が転機になった (3ページ目)

  • 山本夢子●取材・文 text by Yamamoto Yumeko
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【ありがとう、との気持ち】

 SP後に「いい演技をショート、フリーでそろえること。順位はあまり気にしていなくて、自分が満足できる演技を披露できたらいいなと思って今回臨みました」と話した青木は、フリーでもその輝きを見せた。

 ミーシャ・ジー振付けの『She』は、自らのスケート人生を重ねたというプログラム。伸びのあるスケーティング、音とともに多彩に変化する動きは見る者の心を動かし、「大きな会場で滑ることができて幸せを感じた」という気持ちは表情にも溢れていた。

 代名詞でもある3回転ルッツ+3回転ループのコンビネーションはルッツの単発になってしまったが、女子ではなかなか見ることのないダブルアクセル+オイラー+3回転フリップをしっかり着氷。中盤の構成を変更してコンビネーションジャンプのリカバリーをし、これまでの経験を活かした対応力も見せた。

 演技前は「緊張で足がふわふわしていた」とのことだが、それでも持っている力を出しきった。最後のポーズで見せた表情には万感の思いがにじんでいた。その一瞬の表情について青木は、「(演技を)見てくれている方にありがとうという気持ち。私がこれだけ気持ちよく滑れたのは観客のみなさんのおかげですし、見てくださったうれしさと感動が大きかったです」と笑顔で大会を終えた。

 競技終了後のエキシビションでは、2021年から2シーズン使用したSP『The Artist』を再演。滑りで音を表現する唯一無二の演技で観客を魅了した。シーズン序盤には頭の片隅に今季引退もあった。

 だが、今回の経験で「ショートもフリーも大きなミスなく自分らしい演技ができたというのは自信になりましたし、今後につながっていくなと思いました」というように、全日本選手権、さらにその先に続く青木祐奈の未来に期待したい。

著者プロフィール

  • 山本夢子

    山本夢子 (やまもと・ゆめこ)

    スポーツライター。青森県八戸市出身。5歳からフィギュアスケートを習い始め、高校卒業まで選手として各大会に参加。その後、渡米し大学を卒業、就職。帰国後は、コピーライターとして広告制作に携わる。2005年からフリーランス。現在はライターとしてフィギュアスケートの専門誌を中心に執筆中。

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