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宇野昌磨、全日本フィギュアで圧勝も「大会で成績を残したいという意志でやっていない」。さらなる高難度への挑戦を明かす (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【さらに高難度のプログラムに挑戦】

「本当にいい練習が今日まで積めていたし、公式練習もすべてよかったと思います。でもまだまだ成長していきたいと思っている。

 フリーの構成も今回は失敗したけど、練習では本当に、自分のなかでは普通のものになってきているので、またひとつ難度を上げたプログラムというのも考えていきたいと思います。

 そういったところも頭に入れながら、次の大会はだいぶ先になると思うけど、いろいろ試していきたいなと」

 冷静な表情で話した宇野は、その構想も明らかにした。

「ひとつにはトリプルアクセル+トリプルアクセルを入れるとか。4回転に新しい種類を入れで増やす場合、僕のジャンプ構成ではセカンドにトリプルアクセルをつける以外に、難易度を高くするためには不可能なので。

 新しく4回転を増やす前に、セカンドにトリプルアクセルをつけることからやっていかなくてはいけないと思います。実際にそうなるとどこかに3回転を入れなければいけなくなり、その3回転のGOE加点は下がってしまう。それを合計しても2点くらいしか上がらないと思います。でも先を見据えた時には必要な構成になってくる」

 今季はすべての試合で危なげなく勝ち、GPファイナルではシーズン世界最高の304.46点を出し、他の選手たちを圧倒している。連覇がかかる、さいたま開催の世界選手権へ向けても自信を深めている。

「他の選手たちがどのようなコンディションでくるかわからないですけど、これから数カ月間で僕がもっとレベルアップしていけば十分に優勝を狙える位置にいると思います。

 でも、本当に僕自身が......。これは昔からですけど、何かの大会で成績を残したいとかいうような意志ではスケートをやっていないので。だから五輪でメダルを獲って世界選手権で優勝したあとでも、モチベーションはまったく衰えない。

 次の世界選手権は周りからも連覇を期待されるだろうし、自分も練習では連覇できるように最善を尽くしたいと思うけど、実際に試合になったら連覇というものではなく、自分がフィギュアスケートに対して何をやり残しているか。何を表現したくて、何を成し遂げたいのか、ということを追求していきたいと思います」

 唯我独尊、我が道を行く。

 追いかける存在だった羽生結弦やネイサン・チェンがいない今、自分がフィギュアスケートのために何ができるのか、宇野は考えている。その道を目指す決意を、全日本選手権の優勝でさらに強くした。

【著者プロフィール】
折山淑美 おりやま・としみ 
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、これまでに夏季・冬季合わせて16回の大会をリポートした。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追っている。

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