得意のジャンプ転倒で涙、体調不良の悔しさ、主役候補の気負い...全日本フィギュア女子で足跡を残した3人の「敗れざる者たち」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【トリプルアクセルで転倒し無念の涙】

 昨シーズン、北京五輪や世界選手権に出場し、一躍脚光を浴びた河辺愛菜(18歳、中京大中京高)も、全日本では敗れざる者のひとりだった。

「目標としては、去年を超える。表彰台を目指したいと思いますけど、結果にこだわり過ぎず。自分の演技のよさを伝えられるように、表現に気をつけて」

9位の河辺愛菜9位の河辺愛菜この記事に関連する写真を見る 開幕前日のミックスゾーンで、河辺はそう意気込みを口にしていた。昨季は五輪出場権を獲得するまで、その勢いで一気に駆け抜けている。躍進は目覚ましかったが、心身ともに消耗したのだろう。今も調子は戻っていない。

 そしてSPでは6位。ルッツの着氷が乱れるなど悔いが残った。

「やらずに後悔したくなくて。トリプルアクセルは失敗も多いですが、跳べる回数も多くなってきているので」

 河辺はそう言って、フリーで代名詞となった大技・トリプルアクセルを入れることを明言していた。自信というよりは、勝負への不退転の決意だった。昨シーズンはその賭けに勝っていたのだが......。

 フリーは冒頭のトリプルアクセルで転倒。どうにか持ち直したが、後半のフリップでも再び転倒した。得点は伸びず、11位だった。結局、総合9位まで順位を落とした。

「トリプルアクセルは挑戦したい気持ちが強かった」

 取材エリアの河辺は、無念さに涙で声を詰まらせた。自分との戦いだったのだろう。失敗はしたが、生き方を裏切らなかったことは次につながるはずだ。

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